プレスリリース

【福井県坂井市】オール福井ロケ なぜ三国町がロケ地に選ばれたのか

リリース発行企業:坂井市役所

情報提供:


映画「カナといた、夏(仮)」のロケハンで、三国町安島の集落で撮影ポイントを確認する久保田プロデュ-サー(右端)らスタッフ一行

 福井県坂井市の三国町をロケ地に、映画「カナといた、夏(仮)」の撮影が6月から7月末にかけて行われた。映画は、海辺のまちでの少女のひと夏での体験を描いた物語。2年前の北陸新幹線の福井延伸以来、福井県は映画やTV・配信ドラマなどのロケ誘致に熱心に取り組んでおり、今回のプロデューサーが、大ヒット映画「国宝」や「さとこはいつも」を手がけた久保田傑さん(61)でもあり、坂井市も撮影に全面協力、100名規模のエキストラが集められるなど、この夏、県内では大きな話題となった。全国にロケ地候補があった中で、今回、なぜ三国がロケ地に選ばれたのか、久保田プロデューサーに“決め手”を聴いてみた。
県と坂井市の職員2人が誘致に奮闘
 映画「カナといた、夏(仮)」は、主人公の少女カナが、夏休みに父の実家がある海辺の町を訪れ、さまざまな出会いを通して成長していく姿を描く。出演者や監督などは未発表だが、オール福井ロケで、撮影場所の9割は日本海沿いの三国町で、俳優陣・スタッフら総勢約50人が滞在し6月20日過ぎから撮影が始まった。7月初旬、夏祭りのシーンではエキストラとして延べ300人以上の県民らを動員して順調に撮影が行われた。久保田プロデューサーは年明け1月ごろから、ロケ地の選定に取り掛かり、他県の候補地も考慮しながら、三国町には4度もロケーションハンティング(通称・ロケハン)に訪れたという。今回はどのように三国町がロケ地に選ばれたのか、その経緯や、7月中旬までの撮影の様子を、久保田プロデューサーに聴いた。一問一答は次の通り。

「いや~、三国でのロケはミニミラクル(小さい奇跡)があったね」と話す久保田傑プロデュ-サー
ロケ候補「最初は4つほどあった」―「海が見えるまち」という設定ながら、ロケ地は全国に候補があったと聞いているが…。
久保田 新潟、富山、静岡・浜松それに福井はここ坂井市と4か所ほど候補はあって、その4つになったのはほぼ僕の勘でした。新潟県はフィルムコミッションで定評がある土地だし、富山もロケ誘致に熱心。この映画は、原作はないけれど、僕の中にはなんとなく日本海側かな、というイメージはあった。もともと監督は葉山(神奈川県)の海をイメージしていて…でも、人出や混雑が多いところだから…夏祭りのシーンとかは無理だなって考えていた。
 ここ(福井)は、県(フィルムコミッション)の大谷桃子さん、伊藤佳蓮さん(坂井市役所)と繋がりがあったので、最初からロケ地候補の写真をバンバン送ってくれた…最初こそ、道の写真ばっかりだったけれど、とにかく2人は撮影を自分事のように受け止めてくれるのが嬉しかった。やっぱり、ロケ地を決めるのも「人だな」と思う。
 僕がロケ地を見つけてきたように話をしていますけれど、もう2人は有能なスタッフですよ、台本にも2人の名前がありますかから…。
 面白いもので、最初、葉山の写真を送ってこんな感じ…って、やり取りから始まるんですが、メールでコミュニケーションを積んでいると彼女たちの写真の撮り方、情報の選び方までが、段々と進化してくるんですよ。こちらが、こういう感じというオーダーを出すと、それに近いものが出てくるようになる。それだけ一生懸命やってくれた。





三国サンセットビーチでは、夏祭りのシーンが撮影された
ロケ班は大所帯「移動はなるべく避け、コンパクトに撮りかった」―映画の脚本の中で「高台の一軒家」や「海が見える公園」…など重要な撮影箇所について、まだ現場に来ていない監督のイメージと、ロケハンをしている久保田プロデューサーのイメージ、この2つをどうやって一致させるのですか。プロデューサーの仕事としても大事な部分と思うんですが…。
久保田 僕は脚本をいじったりはしませんが、じっくりと読み込んでいますから…。シーンについて、勝手ながら、僕なり「大体、こういうこうじゃないかな~」というイメージの場所の写真をネットで探して、「これに近いような場所はないですか」とフィルムコミッションに投げた。
 例えば「父親の実家の間取りはこんな感じ」とか、「窓から海が見える」とかね。なかなか100%同じはないけれど、大体近いものは見つかるんですよ。あとはロケハンに来て、カメラマンさんもベテランだし、一緒に見て回って…。特に今回は三国町に来て思ったんだけど、ここは不思議と掘り出し物がよく見つかるんですよ。それが徒歩で回る圏内で見つかる。例えば、カフェをさがしていたら、そんな家とか、絶景のポイントはここだ、とか、いろいろなものが見つかる。
 あとは、撮影で一番困るのが、移動なんです。俳優やスタッフら大人数を一回一回移動させるのって、時間的にも予算的にも一番避けたい。だから、移動時間をかけずに、1箇所で撮影したい場所が見つかるこの三国町って、小さなミラクルだよね。
―そんなに希望通りの場所が、偶然、坂井市で見つかるもんですか?
久保田 あれもそうだったよね。 朽ちた大木を撮らないといけない場面があって。周囲に何もなくて老木がポツンと1本だけ立っている。「そんな場所、どうすんの。全国を探さないといけない」って言ってたら、ある日スタッフが「ありました~」って、「いや、あるわけないでしょ」ってみたら、坂井市内(丸岡町)にあった。写真見て「あるね~」ってびっくりしたね。所有者のおじさんが「近く切り倒そうと思っていた」って言うから、「ちょっと待ってくださいよ」とお願いしたぐらい、イメージにぴったり。
―映画の中では、舞台はどことは特に描かれないようですが、三国のまちが持つ空気感というか、雰囲気はスクリーンを通して伝わりますか?
久保田 それは伝わると思いますよ。ほかにはない。三国ならではのまちの雰囲気とかが。
 あと、エキストラね。出演の俳優さんとか、監督の名前は宣伝の関係で、まだ表に出せないんですが、福井の人って、平日なのに、連日100人ぐらいが普通に集まってくれるんですもの、あれも助かった。どんな映画かよく分からない情報もない中で、早朝から長い時間を待機してもらったり…、本当に福井をロケ地に選んでよかった。
―現時点(7月22日)で、撮影は順調なんでしょうか?
久保田 お陰さまで、撮影はかなり順調です。曇ったり、猛暑だったり天候のブレはありましたが、大体、思い通りにいっていると思います。ひとつ難を言うとしたら、どこを撮っても海が入ってしまうことかな(笑)。福井はまた、機会があったら、撮影に来たいと思いますよ。東京から新幹線で3時間でしょ…それも大きい。今回の映画はすべて福井で撮影します。東京のスタジオでの撮影は考えていません。地方では、スタッフが長く滞在できるホテルがあって、とにかくコンパクトに撮れる、そこが大事なんですよ。




「こんな海の景色が撮れる?」から始まって4ヶ月
                  … 三国ロケ誘致に貢献した2人
 久保田プロデューサーによると、この映画のロケ地誘致には、大谷桃子さん(県フィルムコミッション・ロケーションコーディネーター)と伊藤佳蓮さん(坂井市役所移住定住推進課)のコンビの貢献度が大きかったようだ。では、彼女たちはこの映画誘致をどう感じ、どう動いたのか…2人に話を聞いた。【2人の敬称略】
 この映画との最初の接点は、大谷が東京での「JFC(ジャパン・フィルム・コミッション)全国ロケ地フェア」に顔を出し、知り合ったフリーの映画制作関係者に福井をアピールしたときのことだった。その人物が今年1月21日に開かれた同じフェアで、福井県のブースに連れて来たのが、久保田プロデューサー。
 「その時、久保田さんから教えてもらったのは、いま、動いている映画のロケ地候補で、新潟、富山、石川、福井、それに京都が上がっていました。ただし、監督さんのイメージにあったのは神奈川県の葉山の風景ようで…葉山の海岸や坂道などの写真を手渡されて、福井に似たような風景があるか、と。その場では詳しい話もできず、改めて会社に行きますと約束を取り付けたんです」。この時点で、大谷は、海岸や坂道が重要な場面になるという以外、さほど情報がなかったものの、「葉山」の写真に近い風景が撮れるロケ地が福井にあるか…が大きな鍵になると思った。
 1月末、大谷は久保田プロデュ-サーに会う前日になって急遽「(ロケ候補地の)お土産を持っていかなくては」と思い、「このイメージに近い場所の写真を見繕ってほしい」と依頼したのが、坂井市役所の伊藤だった。大谷の頭の中には「海岸や坂道、高台の町並みだったら、三国町(坂井市)」とのざっくりしたイメージが浮かび、ロケ地探しで、いつもフットワークが軽い仕事ぶりの伊藤に白羽の矢を立てた。
 「今思えば、無茶振りでした」と笑う大谷だったが、「海の景色の三国のいくつかの写真を用意して」と夜中にメール。アポが「明日の午後なの」とメールを見た伊藤はやや焦ったものの、三国の海岸は普段から個人的に撮り貯めていた写真があり、それに観光素材を混ぜて15枚の写真データを翌朝、上京する大谷のPC宛へ送った。

7月初旬、三国サンセットビーチでの“夏祭り”シーンの撮影では、マスコミを通じて大勢のエキストラが集められた。

「今回がダメでも、福井の印象が残ってくれたら次が…」
 運が良いことに、その中の1枚が「決め手になった」と大谷。三国町米ケ脇にある白山神社。鳥居を見下ろすように手前に長い階段、鳥居の先には海が見える奥行ある写真だった。それを機に、久保田プロデュ―サーからは「こんな場所を探してほしい」という具体的なイメージを伝える宿題が舞い込み、3月はじめ、大谷は伊藤と2人での三国ロケハンで駆けずり回った。
 「高台の一軒家」「海が見える公園」「海辺のまちの点描」…「こんな感じかな」…伊藤もまたプロデューサーが大物らしいという以外、映画の情報がない中、「とにかく大谷さんの本気度がすごくて…勢いに引き連られて」と述懐する。
 「他の候補地が、ロケ誘致で実績がある新潟と最近、すごくロケ誘致に力を入れている富山が入っていたでしょ。相手は手強いと思いつつ正直、負けたくないとも思っていた」と大谷。伊藤もまた「(イメ―ジの場所が)見つかりませんでした、とは絶対言いたくなかった」と次第に熱くなっていった。幸い高台の一軒家は、ちょうど海を見下ろす空き家が見つかった。2人は、家の内部、周辺の坂道やバス停などまちの雰囲気が伝わる被写体に、ひたすらスマホを向けた。制作陣に代わって2人が実質のロケハンをしているようなものだった。

ロケ誘致の最初の段階で、決め手となった白山神社の鳥居の写真

 写真を送り続けているうちに、久保田プロデューサーが「3月中旬、一度、現地を見たい」と三国を来ることになった。その日までに2人が送った三国の風景写真は16カ所167枚になっていた。
 プロデューサーが現地に来た。「この時点で、三国ロケは決定」とは思わなかったのか。大谷は全然、思わなかったと言う。「だって、競合の候補地からどんな写真が送られているのか、分からなかったし…。『とにかく頑張っていますから』と久保田さんに姿勢を見せるしかなかったです」と大谷。「伊藤さんともよく話したんですが…今回、誘致がダメでも、プロデューサーが1度来たということは、その方の頭に景色なりが一度ストックされるじゃないですか。私たちの対応とか、場所のイメージが記憶に残ることって、今回の誘致がダメでも、次につながる、そう考えていました」。

「ここは、まるでラビリンスだね」の声に、手応えを感じたが…

 4月初旬、ついにプロデューサーや監督、カメラマンが4人で来ることになった。本格的なロケハンだったが、時間はたったの1日、日帰りだった。その時、2人が印象に残る場面があった。東尋坊近く、「雄島」のある集落・安島を散策した時だった。美術担当のスタッフが、集落内をうねるように続く路地の坂道を歩いたり、見上げたりしながら、「何ここ!まるでラビリンス(迷路)だね」と声を上げた。「何でこんな向きがバラバラの建て方なの、見たことないね、こんなとこ」、「主人公のカナが迷い込むのにぴったりだね」とのスタッフたちの興味深げな行動は、2人にとっては嬉しい反応だった。ただ、帰り際はあっさりと、一行は東京に帰っていった。「ダメだったかあ」とその反応に2人は肩を落とした。

映画では架空の海辺のまち。「それでもいい。いい風景がスクリーンに出てきたら」

 だが、翌日、大谷は吉報の電話を受け取る。「はい、福井で決まりましたから…」と久保田プロデューサーは電話口でサラリ。「ええっ」と驚く大谷。「実は福井駅への帰りの車の中では、もう、みんなが福井だよね、って決まってたんですよ」。「なんだ、そうだったんですか」と大谷。内心は「やったー」と叫んでいた。
 なぜ、今回はロケ誘致が成功だったのか。大谷は「やはり三国のまちが持っている魅力が一番でしょう。海を含めた景色が素晴らしかったんですよ」と話し、伊藤もまた「三国の持つポテンシャルですよね」とうなずく。「ロケが始まってから、私も三国に頻繁に来てるんですが、何だろう…物語を描きやすいまち、ですね、きっと」。
 ただ、今回の映画は、ストーリーの中で明確に、舞台が福井の三国と、うたっているわけではない。海が近い日本のとあるまちとの設定だ。それでもスクリーンから三国らしさは伝わるのだろうか。大谷は「観客にその映画が好きになってもらうことが一番だと思っているので、映画を通じて、ああ、なんかこのまちの風景いいなって感じてくれたら…。実はそのまちが福井だったんだ…と後から伝わる、その順番でいいんじゃないでしょうか」
×              ×             ×
 映画「カナといた、夏」の三国ロケは6月22日~7月27日に行われた。この映画製作に関わる「オフィス・シロウズ」によると、公開日は未定で、監督や出演者についても公開日が決まり次第、その後に合わせて発表される予定という。

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
ALL