1793年創業の漆塗師屋・株式会社漆琳堂(福井県鯖江市、代表取締役社長 内田徹)は、2026年6月の株式会社中川政七商店との資本業務提携発表を経て、“100年先も漆を塗り続ける”というビジョンの実現に向けた新たな挑戦を始めます。このたび、越前漆器のものづくりを次世代につなぐため、木地・研ぎ・下地など、これまで産地内の分業によって支えられてきた工程を自社内にも持つ「垂直統合」の取り組みを本格化します。
また、ものづくりの体制強化とあわせて、漆器をもう一度日常の器として使われる存在にしていくため、プロダクトデザイナーの深澤直人氏を迎え、新たなシグネチャープロダクト「一日一膳」の開発を始動。2026年10月受注開始予定です。“つくり続ける”こと、“使われ続けること”の両面から、越前漆器と漆の産業を次世代へつなぐ挑戦を進めます。

「一日一膳」木地試作品
福井県鯖江市河和田地区を中心に作られる越前漆器は、飲食店や旅館、ホテルなどで使われる業務用漆器において全国シェア80%以上を占め、年間出荷額は約57億円※と、全国の漆器産地においても日本一の規模を誇ります。約1500年続くこの産地は、木地・下地・塗り・研ぎ・加飾などの工程を各工房の専門職人が担う「分業制」によって、品質と生産力を両立してきました。
一方で、その分業制を支える担い手は大幅に減少しています。河和田地区の漆器関連事業所は、1998年の354カ所から2024年には184カ所へと減少。26年間で約170カ所と、半数近い事業所が姿を消しました。なかでも、漆器の丈夫さと品質を左右するお椀の「下地」工程は担い手が限られ、現在、下地の職人はわずか2軒へと減少しています。
こうしたなか漆琳堂は、産地のものづくりを100年先へつなぐため、木地づくりから下地、研ぎ、塗りまでを自社内で一貫して担える製造体制の構築に踏み込みます。同社では五代目・内田忠吉の時代に、木地、下地、塗りまでを担う生産体制を築いていました。八代目・内田徹はその体制をさらに拡張し、2024年7月に木地ろくろを導入して木地場を新設。漆琳堂では約100年ぶりとなる木地師1名を雇用し、漆器の素地となる「木地」の製造から担う体制を整えました。さらに2025年10月には、漆器の品質を左右する「研ぎ」工程の体制を拡大。産地職人から下地工程を直接学びながら技術習得も進め、産地との分業を続けつつ、自社でも一貫製造できる体制を築いてまいります。
※出典:2024年経済構造実態調査 製造業事業所調査「地域別」統計表データ
業務用漆器において全国シェア80%以上を占める越前漆器。一方で、工房や工程の担い手は減少し続けており、ものづくりを支える人と技術をどう次世代へつなぐかが課題となっています。
そうしたなか、2015年に始まったオープンファクトリーイベント「RENEW」をきっかけに、産地に新たな人の流れが生まれています。2025年には過去最多の122社が参加し、3日間の来場者は延べ5万5,000人、売上は約4,200万円を記録。10年間で地元企業へ69名の若者が就業し、43店舗のファクトリーショップが生まれるなど、産地の商いと雇用にも変化をもたらしています。
RENEWを運営する一般社団法人SOEの代表理事であり、漆琳堂代表でもある内田徹は、産地に生まれた新たな人の流れを、ものづくりを担う力へとつなげたいと考えています。漆琳堂では現在、20~30代の塗師4名および木地師1名が働き、垂直統合とあわせて、次世代のつくり手の育成にも取り組んでいます。

Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)
1793年創業の漆琳堂は、業務用漆器の製造を中心に歩みながら、近年は自社ブランドや食洗機対応漆器の開発を通じて、現代の暮らしに漆器を広げてきました。2017年度に約2割だった自社ブランド比率は、2025年度には約4割に拡大しています。
次に目指すのは、漆器そのものが100年先の暮らしでも使われ続ける未来です。その挑戦として、人が無意識に心地よいと感じる普遍的なデザインを追求してきたプロダクトデザイナー・深澤直人氏を迎え、シグネチャープロダクトとなる「一日一膳」の開発を始動しました。
「外食やコンビニ飯が多くなった現代にあって、一日一食でもちゃんとした器で健康なものを食すことは、まさに『一日一善』であり、『一日一膳』でもある」。
深澤氏のこの言葉を起点に、朝の味噌汁をよそい、疲れて帰った夜にも自然と
手が伸びる、100年後も日常に残る器を目指します。

商品名:「一日一膳」商品情報:2026年8月下旬に詳細発表予定 発売時期:2026年10月9日(金)~11日(日)オープンファクトリーイベント「RENEW」で受注開始予定

“私は造形に興味があるからかたちにうるさい。
だから漆器に対しては木地師と塗師に分かれるとすると、まずかたちが良くないものは塗りの良し悪しの前にもう興味がない。塗師に関しては艶を最も重んずる。艶は照りすぎず曇りすぎずであり、表面のシボは目立ってはいけないし、吹き付けのような人工的な表面仕上げは問題外である。
塗師は漆という自然の樹液の性質を熟知していることが専門家としても最も大切な素養である。かつ、その樹脂の持つ性質を十分に生かして塗らなければならない技が必要である。何層にも重ねた塗りと、それを研いでいく工程で現れる色合いや透けとの絶妙な調和が偶然と必然の揺らぎの中で精度を高めていくことが職人技と言われる所以である。たとえば、限りなく平滑を出そうとしても、だれるということが漆の魅力だと思う。” 深澤直人
d142532-6-6ea7e3d6b38954170e7c4edcb0018dc3.pdf
株式会社漆琳堂
事業内容:越前漆器製造販売(業務用漆器、自社ブランド、OEM生産)
本社:福井県鯖江市西袋町701
創業:寛政5年(1793年)
代表取締役社長:内田徹
企業サイト:
https://shitsurindo.com/