食べる 買う

「あぶらげの煮たの」専用調味料 福井の企業が開発、「郷土料理を後世に」

商品を手にする大津社長

商品を手にする大津社長

  • 72

  •  

 福井市の食品原料卸「カクダイ」(円山1)が6月16日、煮物用調味料「油揚げ 煮物出汁(だし)」の販売を始めた。

調理イメージ。写真手前が「ケの日」、奥が「ハレの日」で調理した「あぶらげの煮たの」

[広告]

 福井では「あぶらげの煮たの」という名でも親しまれる、油揚げの煮物向けの専用調味料。福井県内の豆腐店向けに大豆や食用油などを販売する同社が、「福井の郷土料理を後世に伝えるとともに、油揚げの消費拡大につながるきっかけとなれば」(社長の大津竜一郎さん)と、福井県食品加工研究所の協力を得て約1年かけ開発した。

 総務省の調べによると、福井市は1963(昭和38)年以降、60年連続で1世帯当たりの油揚げ・がんもどき購入金額が日本一の県庁所在地。大津さんは「『あぶらげの煮たの』は、(浄土真宗の宗祖である)親鸞をしのぶ報恩講のごちそうに由来する。浄土真宗門徒が多い福井ではしばしば主菜として食卓に上り、60年連続日本一という購入金額につながっている」と話す。

 他方で「福井県内における豆腐店の軒数は、バブル期の約150店から3分の1程度まで激減した」とも。背景には、スーパーマーケットやドラッグストアなどの低価格攻勢、原材料費の高騰、後継者不足などがあり、大津さんは「『あぶらげの煮たの』を下支えしてきた豆腐店のともしびが消えてしまう」と危機感を抱いたという。

 そこで開発を始めたのが油揚げの煮物向けの専用調味料だった。きっかけは2019年、福井駅西の「ハピテラス」で開かれたイベント「あげフェス」。県内約50店の油揚げを集め同社が販売したところ、来場者から油揚げの調理法に関する質問が多く寄せられたという。

 「調理時間がかかったり少人数家族に不向きだったりする煮物は敬遠されがちで、今は油揚げを焼いて食べるという人が多い。ユニークな郷土料理である『あぶらげの煮たの』を伝えていくには、電子レンジなどでも手軽に煮物作りを楽しめるような調味料が必要だと考えた」と振り返る。

 報恩講というハレの席で提供される料理に由来することから、かつて貴重品だった砂糖を多めに使うのが「あぶらげの煮たの」の伝統的な味付けという。開発に当たっては、その味わいを楽しめる「ハレの日」と、薄口しょうゆやかつおだしなどをブレンドした「ケの日」の2種を用意した。いずれも2倍希釈が標準で、好みに応じ味の濃さを変えられるような工夫も凝らした。

 大津さんの夢は、「あぶらげの煮たの」が福井の旅行ガイド誌の表紙を飾ること。「福井の人にとっては当たり前のおかずかもしれないが、油揚げの煮物を主菜とするような食文化は全国的に見ても希少。越前がに、ソースカツ丼、越前おろしそばに並ぶポテンシャルがある」と話し、来春の北陸新幹線延伸開業に向け土産物としての販路開拓も進める意欲を見せる。

 いずれも価格は200ミリリットル入り=648円(税別)。販売店は同社のほか、喜ね舎愛菜館、岸田食品(以上、福井市)、道の駅みくに、小坂屋豆腐店(以上、坂井市)、道の駅越前おおの荒島の郷、吉田食品(以上、大野市)、ウスヤ食品(越前町)。

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース