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福井の伝統工芸広める動画制作へ ウェブで資金集め、ウルシの植樹にも

鮮やかな手つきで絵を描く昌敏さん。「右手の位置を固定したまま、左手だけを動かすのがこつ」という

鮮やかな手つきで絵を描く昌敏さん。「右手の位置を固定したまま、左手だけを動かすのがこつ」という

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 福井県鯖江市出身で東京都内の大手IT企業に勤務する森田裕士さんが現在、福井の伝統工芸品を世界に広めるための映像を作るプロジェクトを進めている。

昌敏さんは昨年、伝統工芸士の認定登録を受けた。「道具の入手が難しくなり、蒔絵用の筆を手掛ける会社は全国に1~2社を残すのみ」と話す

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 約1500年の歴史がある越前漆器など、福井の伝統産業を都市生活者の視点で掘り下げ映像化するという同プロジェクト。森田さんが「伝統的工芸品に携わる職人のかっこ良さを知ってもらい、職人に会うために福井に行きたくなるような映像を作りたい」と企画した。

 森田さんの父・昌敏さんは約40年のキャリアを持つ現役の蒔絵(まきえ)師。「鯖江市を含む福井県丹南地区は5つの伝統的工芸品産地があるエリア。素晴らしい職人が多数いるのに、その良さが東京に伝わっていないのではというもどかしさがあった」。森田さんは伝統工芸業界が直面する課題の一因に「情報・理解不足」を挙げ、情報不足の一助になればとクラウドファンディングサイト「FAAVO(ファーボ)福井」の活用を決めた。

 動画ブランディング会社「ムーブエモーションズ」(東京都渋谷区)が映像を制作する。「私の『職人がもっと稼げる世の中に』という思いを代表取締役の高野仁さんが聞いてくださった。産地にも来ていただき一緒に職人さんを訪ね歩いた」。同社が手掛けた宮崎県綾町や鹿児島県三島村などの地域ブランディング動画も、森田さんが制作依頼するきっかけとなった。

 目標金額は300万円。支援コースは500円から30万円まで15通りあり、1,000円以上のコースで映像のエンドロールに氏名が掲載される。1万円以上からは支援額に応じ、蒔絵を施したカップ、塗り箸、サラダボウル、重箱、戦国武将の家紋が入った椀(わん)などの返礼品もある。企業向けに、自社のPR映像として利用できる映像使用権付きのコースも設ける。

 集まった資金の一部をウルシの植樹費用にも充てる予定。「現在国内で使われている漆の99パーセントは中国からの輸入品。国産品は岩手・茨城・栃木などで作られているのみで、越前漆器も材料を海外に頼っている状況」。漆器産地の知名度向上だけでなく、ウルシ生産地再興の足掛かりとしても同プロジェクトを位置付ける。

 「尊敬する人は父」と言い切る森田さんが企画を伝えたのは2カ月ほど前。昌敏さんは「息子は高校時代から行動的で『福井の伝統工芸を都会の人に広めたい』と常々話してくれていた。直接的に職人として携わらなくても、映像制作という方法で伝統工芸を受け継ぐのも一つの在り方。親としては『本業で疲れているだろうから週末くらい休めばいいのに』とも思うが、応援の気持ちが素直にうれしい」と目を細める。

 5月12日締め切り。

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