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「恐竜王国福井」30年の歩みつづる書籍 鯖江市役所職員が自費出版

オンライン取材に応えた大森さん。「東さんへの取材を通して、ブレークスルーを起こせる人が持つ信念の強さに心を打たれた」と話す

オンライン取材に応えた大森さん。「東さんへの取材を通して、ブレークスルーを起こせる人が持つ信念の強さに心を打たれた」と話す

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 福井県鯖江市役所の男性職員が5月下旬、「恐竜を追え-『王国』福井30年の歩みとこれから-」を自費出版した。

巻頭には国内の新種恐竜を網羅したミニ特集も。県外のCG作家やイラストレーターの協力も得て実現したという

 執筆したのは市民まちづくり課に勤務する大森治幸さん。恐竜化石産出量日本一を誇る福井県が「恐竜王国福井」と呼ばれるに至った経緯を、福井県立恐竜博物館(勝山市村岡町)開館などに尽力した東洋一さん(福井県立大名誉教授)の足跡を軸に構成した。今春まで勤務していた毎日新聞社福井支局時代に手掛けた連載記事を基に、同社の協力を得て出版にこぎ着けた。

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 県内での発掘調査が始まった30年前から現在までの歩みを、「太古の風切る『福井の翼』」「予備調査から本格調査へ」「中央と地方」「夢を追う人たち」など12のパートで展開。映画「ジュラシック・パーク」の主人公のモデルとされるカナダの恐竜学者フィリップ・カリーさんら関係者への周辺取材も盛り込んだ。新型コロナ禍で同館が臨時休館となり、年間入館者数100万人を伝える予定稿(=重大ニュースに備えて用意しておく原稿)が幻となったことなど新聞記者のリアルを描く一節もある。

 2017(平成29)年、同支局配属となった大森さんが恐竜に関心を寄せたのは、県政担当となった2年目のことだったという。「一つは、恐竜や教育などが全国に届きやすいネタであったこと。もう一つは、2019年が発掘開始30年、2020年が恐竜博物館開館20年と、節目となるイベントが立て続けに控えていたことだった」。やがて東さんとも懇意となり、オフレコと念を押された「引退宣言」の情報をつかんだのをきっかけに、「新しいことをやりとげた人のオーラル・ヒストリー(=口述歴史)を残さねばと取材を重ねた」と振り返る。

 初出時は同紙ネット版で連載され、大森さんによると「新聞記事としては異例の長編原稿」という。「全国版の連載枠を狙っていたが、海外支局も含めた多くの記者たちが連載の機会をうかがう場でなかなか空きがなかった」。在籍当時の支局長が本社科学部で長く勤務した経験があり、「私の思いをくんでネット版での連載を推してくれた。科学記者の目から私の原稿を冷静に判断してくれたこともありがたかった」と感謝する。

 制作・印刷を依頼した印刷会社担当者の計らいで、当初の出版部数を積み増しすることもできた。「『自費出版で高い志をもって作られた本なので、私としても応援してあげたい』と言っていただき、取材でお世話になった方だけでなく、県内の公立図書館にも寄贈できることになった。新聞記者としての最後の仕事を、恐竜という福井のキラーコンテンツで飾ることができたのは大きな喜び」と笑顔を見せる。

 A4判70ページ。福井県立図書館など福井県内の公立図書館で閲覧できる。