福井市にある「まあるカフェ」(福井市灯明寺3)で現在、恩送りカード「あったカード」のイベントが行われている。
見知らぬ来店客同士が温かな気持ちを添えたメッセージカードとドリンクを介してつながり合うイベント。福井大(文京3)国際地域学部「課題探求プロジェクト」の一環で、同学部3年の村上明日香さん、大良菜月さん、佐藤詩奈さん、菅原和紗さんでつくるグループが同店の協力を得て準備を進めた。
グループが同店で行う参加型イベントは今回が3回目。福井県内の高等教育機関などが参画する協議体「FAA ふくいアカデミックアライアンス」の「FAA 学ぶなら福井!応援事業」の支援も受ける。
100円で販売するカードには、送り先、送り主の名前、年代、メッセージなどの記入欄を設ける。送り主が「映画好きな人へ」「最近うれしいことがあった人へ」など送り先を指定して掲示板に貼り付け、自分に当てはまるカードを見付けた別の来店者がドリンクと引き換えることでコミュニケーションを取る。
対象ドリンクは、オレンジジュース、ウーロン茶、コーラ、メロンソーダ、ブレンドコーヒー(ホット、アイス)の計6種で、テークアウトも受け付ける。ドリンク引き換え後、カードにお礼メッセージを追記して店舗スタッフに渡すこともできる。
課題探求プロジェクトでは学生が地域社会が抱える課題を発見し、大学と地域の現場を行き来して解決の可能性を探る。村上さんは「コロナ禍によって孤独や孤立を感じるようになった人がいると見聞きし、人と人とのつながりをつくることで、周囲の人たちの温かさや思いやりを感じるきっかけになればと立案した」と振り返る。
見知らぬ人同士をメッセージでつなぐ手法は、ある人から受けた親切を新しい親切でつなぐ「ペイ・フォワード(=恩送り)」の動画を見たことがヒントとなった。「アメリカのカフェの様子を映した動画で、温かな心の交流を感じた。カードを介したやりとりなら、非対面の環境でもイベントができるのではとメンバーに投げ掛けた」と村上さん。
国内でもカードを介した取り組みの先行事例はあったが、同店にふさわしい名前にしようと「あったカード」と名付けた。名前には、温かな心の触れ合い、自分好みのカードを見付けた時の「あった!」という喜び、カードを通じた新たな出合いなどの意味を込めた。
11月下旬にイベントを開始し、週末を挟んで恩送りの実績も増えつつある。「欄外に『いい取り組みですね』と私たちへの感想を添えてくれたり、10代と50代の間でメッセージの交換があったり、初めて店に来た人が『このカフェのことが好きになった』と書いてくれたり、始めて10日ほどだが取り組みの手応えを感じる」。村上さんはカードがつづられたアルバムを手に笑顔を見せる。
同店は昨年7月にオープンし、地域住民の健康づくりなどを支援する「コミュニティーナース」の加藤瑞穂さんら計15人が店を運営する。加藤さんは「幅広い層の人が関心を寄せてくれ、人をつなぐ媒体としての紙の強みを再認識した」と話し、「スタッフ同士の話題づくりにもつながっており、プロジェクト期間終了後も形を変えながら発展的に続けていければ」とプランを描く。
営業時間は10時~17時(ラストオーダー16時)。金曜定休。12月中旬まで。