福井市にある「まあるカフェ」(福井市灯明寺3)に4月6日、福井市街の桜並木を描いた丸シールアートがお目見えした。
ハッシュタグ「#まあるで繋がろう」などでのSNS投稿も呼び掛ける
丸シールアートは、福井大(文京3)国際地域学部「課題探求」プロジェクトの一環として行われた一般参加型作品。「子育て層の居場所作り」をテーマに、同学部3年の村上明日香さん、大良菜月さん、佐藤詩奈さん、菅原和紗さんでつくるグループと同店がコラボレーションし準備を進めてきた。
「課題探求」では同学部の学生が地域社会の抱える課題を発見し、大学と地域の現場を行き来しながら解決策の可能性を探っていく。テーマ立案の経緯について、村上さんは「昨年のちょうど今ごろ、コロナ禍で交流の機会が持てない子育て世代の孤独をネットの記事で見たことがきっかけ」と話す。
当初は子育て世代にフォーカスして準備を進めていたが、グループメンバー自身も遠隔授業など学びの形態の変化に直面し、対象世代を問わない成果物となるような方向へ転換した。その流れで浮かび上がったのが「参加型」というキーワードだった。
メンバーが「参加型アート」でネット検索するうち、文具の丸シールを画材とした作品を国内外で展示する美術作家・大村雪乃さん(東京都在住)の活動が目に留まった。大村さんとの面識は全く無かったが、課題探求のコンセプトを記して監修を打診したところ、「すてきな活動で応援したい」と快諾を得た。
昨年暮れから大村さんと打ち合わせを重ね、今年2月、市内の足羽(あすわ)山から見下ろしたサクラの名所・足羽河原の風景をモチーフにした下絵パネルが同店に届いた。パネルの大きさは、横=3メートル・高さ=1.5メートルで、「梱包(こんぽう)をほどいた瞬間、想像以上の大きさに驚いた」と村上さんは振り返る。
3月上旬、同店テラス席にパネルを設け、料理の提供を待つ来店者らに丸シールの貼付を呼び掛けた。貼られたシールは延べ約2万枚。子どもが独立し孤独を感じていたというアート好きの年配女性や、30分以上もシール遊びに熱中する子どもなど、作品作りにはあらゆる世代が参加し、メンバーは想像以上の手応えを得た。
参加者アンケートも約250枚寄せられ、「コロナ禍でどの世代がどんな孤独を感じているのか、誰とつながりたいと考えているのかという情報を得ることができた。丸シールを通して多くの人たちと交流できたことがうれしい」と村上さん。市中の感染状況を見極めながら、アンケートを反映した新プロジェクトを企画したいと意欲をのぞかせる。
同店は昨年7月オープン。地域住民の健康作りなどを支援する「コミュニティーナース」の加藤瑞穂さんら計16人が店を運営する。加藤さんは地域医療に関わる立場から「コロナ禍で日常生活から楽しさやうれしさの感情が失われつつある。学生の取り組みは何気ない日常から楽しさを引き出す活動で、人々を幸せにするという看護本来の在り方にもかなっている」と感心する。
営業時間は10時~17時(ラストオーダー16時)。金曜定休。展示は今月29日まで。