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福井駅西「響のホール」閉館へ まちなか再開発事業受け、16年の歴史に幕

響のホール(写真中央)を含む、通称「三角地帯」が再開発対象区域となっている

響のホール(写真中央)を含む、通称「三角地帯」が再開発対象区域となっている

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 福井駅西にある「福井まちなか文化施設 響のホール」(福井市中央1)の閉館が明らかになった。

2017(平成29)年2月には、投資家・桐谷広人さんのトークイベントも開催。バラエティ番組効果で「過去最速ペースで満席」(担当スタッフ)という反響だった

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 2004(平成16)年、福井市が購入した旧山一證券ビルの跡地を活用してオープンした同館。地上6階・地下1階建てで、224席の多目的ホール、音楽スタジオ、パフォーミングボックス(小ホール)、会議室、カフェなどの施設を収容する。閉館は北陸新幹線福井駅開業に向けた西口地域の再開発に伴うもので、4月27日、運営主体である第3セクター「まちづくり福井」(同)が発表した。

 16年間、「まちなかの文化・情報複合施設」というコンセプトの下で市民に親しまれた同館。スタンディング形式の設営もできるホール構造、福井駅西口から徒歩3分という好立地などから、レキシ、東京スカパラダイスオーケストラ、ザ・クロマニヨンズ、くるり、RADWIMPS、モーニング娘。、渡辺美里さん、KANさんなどの全国ツアー会場としても使用された。

 福井を拠点に活動するウインドシンセサイザー奏者・大西泰敬さん(福井市在住)は「アマチュアプレーヤー時代にステージに立たせてもらった後、プロになってもスタッフのみなさんはずっと私を応援してくださった。抜群の音響・照明・スタッフさんの対応、全てが今の自分につながっている。今まで本当にお世話になり、ホール自体は無くなっても私の心には思い出が響き続けている」と感謝する。

 「地下スタジオは、20代のころに活動していたバンドで週2回・4時間ずつ入るくらいのヘビーユーザーだった場所」と振り返るのは、地元ミュージシャン支援のライブイベントなどを手掛ける音楽プロデューサー・久保顕理さん(同)。「ひょんな出会いからスタッフさんがバンドに加わってくれたこともあった。自分の20代を形成する上で大きなウエイトを占めた場所が無くなるのは本当に寂しく、文化発信の施設として無くなるのが惜しい」

 落語やアニメなど、音楽以外のエンターテインメントを市民に紹介する場にもなった。2005(平成17)年から2017(平成29)年まで「世界のCMフェスティバル in FUKUI」を行ったジャン=クリスチャン・ブーヴィエさん(福岡市在住)は「響のホールでのイベントは、スタッフの高いプロフェッショナリズムと格別な優しさで成り立っていた。イベントを支えてくれる人たちと食べる秋吉の焼き鳥も楽しみで、12年間、現地の人とまるで家族であるかのように感じることができた」とコメントを寄せる。

 新型コロナ禍の影響で予定されていたイベントが相次いで取りやめとなり、音響スタッフらは在宅勤務を余儀なくされている。同社の岩崎正夫社長は「このタイミングで閉館の情報を出すのは気が引けたが、教室として利用されているお客さまなどからの要望もあり発表に至った。こんな小さなホールに多くのアーティストさんたちが来てくれたのはまちの財産であり、私も残念で寂しい気持ち」と明かす。

 5月6日まで全館臨時休館。館内各施設の営業終了予定日は、練習スタジオ・レコーディングスタジオ=6月30日、パフォーミングボックス・会議室=同、ホール=5月31日で、営業自粛中のカフェは6月ごろからフリースペースとして開放する準備を進めている。

 建物は秋以降に取り壊しを予定する。同社によると、ホールやスタジオ機能は再開発ビル内に分散配置する方針だが、現行のように本格的な音響機器を揃えた施設にはならない見通しという。

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