福井市を拠点に活動する劇団「演衆やむなし」が8月21日~25日、田原町ミューズ(福井市田原1)で公演9ステージを行う。
会場の田原町ミューズ(手前左)。3月には福井の若手劇団「雨とツルギ」の旗揚げ公演も行われた
上演するのは1990年代に発表された、久野那美さん作「パノラマビールの夜」(21日~23日)、別役実さん作「この道はいつか来た道」(24日・25日)の2作品で、共に同劇団の演出家・中埜コウシさんが演出を務める。
2つの作品が発表された当時の社会について、制作担当の古川真由実さんは「バブル崩壊後の失われた10年と言われ、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件などの災害や事件が相次いだり、自殺者増加など暗いニュースが日本を埋め尽くしていたりする中、携帯電話やインターネットが急速に普及し始めた時代」と話す。
「瞬時に誰とでもつながるツールを手にできて生活が便利になった一方、昼夜問わずツールに縛られ、生きることの息苦しさが増した」とも。「潜在的な息苦しさが始まった1990年代の戯曲を通して、令和の時代をどう生きてどう死んでいくか、戯曲の先にあるまなざしをお客さまと共に考えるきっかけとなれば」と話す。
田原町ミューズは田原町駅に隣接する多目的駅待合所で、音楽イベント、お笑いライブ、トークショーなどの会場としても使われる。「個人的に利用するうち、このスペースが持つ潜在的な力にどんどん引かれた。電車と街とが交差する場なら、私たちが目指す『地域に根ざした演劇活動』ができるのではと考えて会場に選んだ」と古川さん。
8月25日11時からの上演回は、未就学児も入場できる「キッズデー」として設定する。古川さんは「2作品とも上演時間1時間未満で、初めて演劇を見るという方も気楽に楽しんでいただけるのでは。作風が全く異なる2つを見比べていただければ」と呼び掛ける。
チケットは、前売り・一般=1,500円、学生=1,000円、当日・同=2,000円、同1,000円。小学生以下無料。