福井県あわら市の「金津創作の森美術館」(宮谷)で9月17日、展覧会「発酵ツーリズム にっぽん/ほくりく」が始まる。
渋谷ヒカリエで行った展覧会の一こま。今回の展覧会でも、小倉さんと醸造家らによるトークイベントを予定する
みそ、酒、なれずしなど地域の発酵食と観光をつなぐ「観光連動型展覧会」を掲げる同展。東京農業大の研究生として発酵学を学んだ経歴もある「発酵デザイナー」で、発酵食に関する展覧会や著書などを多く手がける小倉ヒラクさんをキュレーターとして招へいする。2019年、渋谷ヒカリエ(東京都渋谷区)で行われた展覧会の巡回展で、福井での開催が全国初となる。
巡回展を掲げるものの内容は刷新し、同館展示室「アートコア」を「47都道府県の発酵」「ほくりくの間」「酵素の世界」などの展示スペース、イベントスペース、物販エリアなど5つのゾーンに分割。ほくりくの間では「北前船」「精進料理」「おすし」「酒と祭り」「現代から未来へ」の5テーマを設け、発酵食をキーワードに食文化、自然の生態系、歴史、文化などを学べる展示を展開する。
サテライト会場として、工房見学イベント「RENEW(リニュー)」会場(鯖江市)、複合施設「SEA SEA PARK(シー・シー・パーク)」(おおい町)、ホホホ座金沢(金沢市)、「D&DEPARTMENT(ディー・アンド・デパートメント)TOYAMA」(富山市)などを設け、北陸の銘醸地を訪ねる「発酵ツーリズム」の出発拠点と位置付ける。
大手旅行代理店とタイアップした、「発酵漁師めし満喫」「ワインとチーズのペアリング」などの発酵食ツアーも企画し、ウェブサイトで順次募集する。小倉さんがプロデュースする「発酵デパートメント」(東京都世田谷区)や、阪神百貨店(大阪市北区)でも北陸の発酵ツーリズムをテーマにしたイベントを行う。
8月5日、同館で記者発表があり、オンライン登壇した小倉さんは「渋谷での展示には5万人が来場し、3割ほどが海外からの来客だった。日本の発酵食は、美食、科学、歴史などさまざまな面から世界的に注目されている。『北陸といえば発酵の旅』と連想してもらえるよう、長い時間をかけて発酵ツーリズムを発展させていければ」と抱負を述べた。
今年で開館24年になる同館によると、食をテーマに展覧会を行うのは異例。渋谷ヒカリエでの展覧会も鑑賞したという担当学芸員の千葉由美さんは「従来、美術館のカテゴリーに入れられてこなかった食の表現を他館に先駆けて開催する。日常生活に根差した発酵食を介して、美術と縁遠い人たちと当館がつながれば」と期待を込め、過去最高の3万6000人を超える来館者を目標に掲げる。
開催に向け現在、クラウドファンディングでの支援も受け付ける。目標金額は100万円で、支援コースは3,000円~30万円の9通り。返礼品として、同展招待券、小倉さんのサイン入りガイドブック(今秋発刊予定)、「ほくりく発酵食詰め合わせ」セット、小倉さんと行く北陸醸造蔵ツアーなどを設ける。9月5日締め切り。
開館時間は10時~17時(入館は30分前まで)。入場料は、一般=1,000円、中・高生=600円、小学生以下無料。月曜休館(祝日の場合は翌日)。12月4日まで。