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福井の「くらしの道具屋 テリフリ」が1周年-金継ぎワークショップも

「開店準備で棚を作るうち木工そのものが好きになってしまった。目的と手段が入れ替わりそうだった」と笑う二木さん

「開店準備で棚を作るうち木工そのものが好きになってしまった。目的と手段が入れ替わりそうだった」と笑う二木さん

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 福井市にある「くらしの道具屋 テリフリ」(福井市文京4、TEL 0776-76-5392)が8月23日、1周年を迎えた。

福井大学正門近く、芦原(あわら)街道に面した立地にある「テリフリ」

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 同市内にある印刷会社のデザイナーだった二木繁樹さんが自宅1階を改装して開いた同店。およそ9坪の店内に陶器やガラス器、台所用品など、手仕事で丁寧に作られた雑貨や道具が並ぶ。店の奥にある小上がりスペースでクラフト好きが集うワークショップも開く。店名の由来は、テリ=晴天、フリ=雨天から。「晴れの日にも雨の日にも暮らしはある」との思いを込めた。

 開店前提での脱サラではなかった。フリーランスデザイナーとして歩み始め、壁塗りや棚作りなど自ら仕事場の体裁を整えるうち、人が交流する場を一緒に設けたいとの思いが募った。「ギャラリーのようなプランを描いていたら、以前から好きだった雑貨への思いが頭をよぎった。だったらこの際、ギャラリーではなく雑貨店にしようと考えた」

 一口に雑貨店といっても、その品ぞろえは各店さまざま。テレビ番組「和風総本家」が好きという二木さんは、作り手の思いが伝わる物や和の味わいあふれる物をメーンに掲げた。「大量生産や大量消費への違和感もあって、手仕事で丁寧に作られたアイテムを選んだ」。長く使い込まれて変わっていく表情こそ道具本来の味わいと話す。

 買い付けでは「自分が好きになれる物か」を品定めの基準にする。「自分が好きになれない物をお客さんに薦めるわけにはいかない。フォルムは良いけど使い勝手が今一つという物もある。自分も見た目から入る方なので、妻が『使い手』としてフィルタリングしてくれるのがありがたい」と二木さん。

 道具を長く使ってほしいとの思いは、ワークショップで腕を磨いた特技の金継ぎにも現れる。「陶芸作家の器を扱うので、お客さんからいずれ要望が出るだろう思った。開店を決めてから石川県での講座に通った」。この春には、師事した講師を同店に招き全6回のワークショップを開催。好評を博したという。

 広い範囲から雑貨ファンが同店を訪ねる。同市内や近隣市町はもとより、富山県や滋賀県などからの来店もある。暮らしの道具をそろえていることもあり来店客の大半は女性だ。「フェイスブックやインスタグラムの拡散力を肌で感じて、立地がマイナス要因にならないことも分かった。むしろ、アクセスしづらい方が『行きたい』という心理になるのかも」

 「長く使える道具を扱う」というコンセプトはもろ刃の剣でもある。修繕を重ね使い続けることが購入頻度の低下を招きかねないからだ。「衝動買いするタイプの店作りではないし、うちみたいな店が少ないのは経営的に成り立たないからでは」。それでも二木さんは、「店内でお客さん同士がつながったり、ワークショップの感想をSNSにアップしていたりするのを見ると感激する」と店を開け続ける。

 これからも際だった宣伝は行わず、地道な活動で地域に根付く雑貨店にしていきたいという。「接客している間に他のお客さんがすっと帰るのは悲しい。買ってもらえなくても、一言でいいからお客さんとは言葉を交わしたい」と二木さん。「プログラマーや菓子メーカーのルートセールスなど職を転々としてきたが、まさか自分が店主になるとは思わなかった」と笑みをこぼす。

 営業時間は12時~19時。不定休。秋の金継ぎワークショップは10月22日からを予定する。

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