福井市の映画館「メトロ劇場」(順化1)で2月5日、韓国映画「ユンヒへ」の舞台あいさつが行われた。
同作品は、韓国で暮らすシングルマザーのユンヒと、長年連絡を絶っていた北海道在住の日本人女性ジュン、女性2人の間の愛の形を穏やかにつづるラブストーリー。2020年、韓国のアカデミー賞ともされる「青龍映画賞」で監督賞と脚本賞を受賞した作品で、ジュン役を福井市出身の俳優・中村優子さんが演じる。
日本では中村さんの誕生日である1月7日に東京など都市部を中心に公開され、福井でも2月5日に同館で上映が始まった。舞台あいさつは福井での上映開始に合わせて行われ、話題の作品と共に中村さんの姿を目にしようと約80人の映画ファンが駆け付けた。
舞台あいさつは16時15分の回の上映後、根岸佳代支配人の進行で約40分間行われた。中村さんは出演のオファーがあった時のことを「準備稿の段階で作品に一目ぼれした。ストーリーに貫かれた女性同士の自然な愛の形に心奪われ、居ても立ってもいられず強い情熱を込め『ぜひジュン役を演じたい』と返信した」と振り返った。
役作りに当たっては、2018(平成30)年に日本語版が出版された韓国小説「82年生まれ、キム・ジヨン」を参考にしたとも話した。「私の想像を超える家父長制の社会で抑圧された女性たちが描かれており衝撃を受けた。ユンヒとジュンが愛し合ったのはそれより10年ほどさかのぼったころで、そのような社会の中でも消せなかった2人の愛情がどれほど強いものだったのかと想像した」
ユンヒ役のキム・ヒエさんとの共演シーンにも触れた。中村さんの特技である能を引き合いに「能のシテ方は回っているのに止まっているように見えるコマにも例えられ、彼女からも同じような強いエネルギーを感じた。共演はジュンも私自身も夢見ていた時間で、短いが濃密なひとときだった」と話し、「残り数カットで撮影が終わるのが惜しく、わざとNGを出してしまおうかと思ったほど」と冗談めかし会場を和ませた。
根岸支配人によると、日本公開の報道直後、同館での上映について問い合わせがあったという。あいさつを終えた中村さんは「スクリーンを背に舞台に立つのは私にとって特別な時間で、今日は懐かしい顔も多く親密な景色だった。この映画に出合った縁、生まれ育った土地に作品を届けられた縁、雪の中足を運んでくださった人たちとの縁など、全ての縁に感謝したい」と話す。
上映は2月18日まで。