福井市の映画館「メトロ劇場」(順化1)で7月17日から、映画「くもりのち晴れ」が上映される。
「くもりのち晴れ」は、市内の建物内外装工事・建材卸「タッセイ」(河増町)が企画・製作した65分の作品。高校時代、駅伝のたすきをつなげなかったという心の傷を持つ若者が建設業に就職し、思い出したくない過去と向き合いながら一人の職人として成長していく過程をつづる。
鯖江市出身で、俳優・映画監督の片山享さんが監督・脚本を手掛け、オール福井ロケで撮影を進めた。主役の山口昇を演じるのは、昨年公開の映画「佐々木、イン、マイマイン」で重要な役柄を演じた細川岳さん。長野こうへいさん、安楽涼さん、熊谷弥香さん、金谷真由美さん、塚原大助さんら、舞台や映画で実績を積み重ねた俳優陣が脇を固める。
片山さんと同社の田中陽介社長が出会ったのは2017(平成29)年、福井市内の映画館で行われた「福井駅前短編映画祭」がきっかけだった。20代の頃、大手通信会社のCMや、メジャーアーティストのミュージックビデオに出演するなど俳優として活動した田中さんは、同郷で同じ年齢という共通点などから片山さんと意気投合。片山さんの長編初監督作「轟音(ごうおん)」に出演するなどして親交を深めていった。
他方で、「『建てる』を応援する会社。」を掲げる同社は2016(平成28)年、技術承継などを目的にした社員職人部門「TAT(タッセイ・アーチザン・チーム)」を立ち上げ、若手育成に力を入れていた。田中さんは「『3K』に象徴される業界全体のイメージを破ろうとしたのもTATを立ち上げた理由の一つ。片山さんと一緒なら、映画という切り口からも業界の捉えられ方を変えられるのではと期待した」と振り返る。
脚本はTATメンバーらへのインタビューを基に3時間ほどで書き上げられた。ストーリーの基底に駅伝を据えた背景には、建設の仕事をたすきリレーに例えた若手職人の言葉があったという。
片山さんは「屈託なく『仕事が楽しい』と応える表情を目にしたり、自身の仕事を誇りに思う気持ちを聞いたりして、私自身の建設業に対するイメージが覆された。福井で撮影した作品だが、一企業のプロモーション映画とも、街なかのランドマークが出てくるような『ご当地映画』とも違う。生きている人の息遣いを大切にしたかった」と力を込める。
ウェブ公開を想定し短編5本構成を予定していたストーリーが60分超の長編に仕上がり、同館の協力で劇場上映も実現した。田中さんは「『作るなら映画館で掛かるような作品を』という夢がかない、社長というより一個人としての思いが強く出たプロジェクトになったかも」と笑顔を見せ、「保護者や先生など若者の就職を支える方にも、作品に込めた思いが届けば」と期待を込める。
上映はレイトショー時間帯に行い、就職活動を控える高校生など若年層への浸透を図るため、26日のみ15時から上映を予定する。
料金は、前売り=1,000円、当日=1,200円。高校生以下無料。同館と同社でチケットを販売する。上映は7月30日まで。