福井の市民グループが現在、今夏の開催を予定する「流れ星フェス」の準備を進めている。
リモート取材に応える加藤さん。「来年以降もイベントを継続できるよう、寄付のネクストゴール(=目標上積み)にも挑みたい」と意気込む
天文愛好者ら15人ほどでつくる実行委員会が企画。開催は今回が初めて。福井県池田町にある農村de合宿キャンプセンターと新保ファミリースキー場を会場に、天体観察会、流星にちなんだクラフトマルシェ、飲食物販売、流星をテーマにしたクイズ大会や演劇などを展開する。新型コロナウイルス感染症防止対策を講じて行う。
呼び掛け人は、永平寺町在住の加藤絢さん。新潟でプラネタリウム解説員を務めていた加藤さんは5年前、結婚を機に夫の勤務地である福井に移住し、現在は「わくわく科学プランナー」として科学をテーマにした出張実験ショー、科学教室などの活動に携わっている。
加藤さんが星空に興味を持ったきっかけは、新潟の空に輝くオリオン座を見たことだった。「父が転勤族で、子どものころは転校が多く、幼なじみと呼べる一生の友達はできないものだと思っていた。オリオン座を見たとき、新潟の前に住んでいた山形でも同じ星座を見つけたことを思い出し、『どこにいても会える一生の友達が見つかった』とワクワクした」と振り返る。
その熱は冷めることなく、大学でも天文部に所属。卒業後には「日本で見ることができない星空に出合いたい」と、ピースボートに乗って世界中を巡った。解説員に就いた原動力は、「私のすてきな友達をたくさんの人に知ってほしい」「星空を見上げることを通して、たくさんの人の人生を豊かにしたい」という思いだった。
昨年12月、ふたご座流星群の時期を機にフェス開催への思いが募った加藤さん。曇天で流星群を見ることがかなわず、子どものころの記憶と共に「多くの人たちと一緒に星を見たかった」という思いがこみ上げた。次の照準に据えたのは、毎年夏に観察できるペルセウス座流星群。「2021年のペルセウス座流星群は月明かりの影響がほとんどない条件で観察できる。活動の極大時間に合わせてフェスをしよう」と動き始めた。
会場には、「県内で星空が特に素晴らしい場所と感じる」という同町を選んだ。「天文学芸員をしている夫が撮った星空の写真に引かれた。私自身も実際に足を運び、太平洋の真ん中で星を見ていた時のことを思い出させてくれた」。山間部で星の光を強く感じられる同町がフェス開催地にぴったりだと確信したという。
開催に向け、クラウドファンディングでイベント費用の寄付を募る。目標額は80万円で、寄付コースは1,000円~10万円の13通り。返礼品として、福井の星空ポストカード5枚セット、流れ星観察キット、フェス当日宿泊プラン、加藤さんによる出張星空観望会、同科学実験ショーなどを設ける。
加藤さんは「県外から移住してきた私にとって、地元の人から『福井には何も魅力がない』という声を聞くのは少し残念」と話し、「地元の人は意識しないかもしれないが、福井には美しい星空という素晴らしい宝物がある。その宝物は一度壊したらなかなか取り戻せない。豊かな自然環境の尊さを感じ、福井をもっと好きになってもらえるきっかけになれば」と賛同を呼び掛ける。
フェスの開催日は8月12日。開催時間は16時~翌5時。クラウドファンディングの締め切りは6月30日23時。