福井市の映画館「メトロ劇場」(福井市順化1)で9月上旬、1950~1960年代の映画ポスターや宣伝用の看板などが見つかった。
「イージー・ライダー」のポスターと、タイトル文字をまねて描いた同館オリジナル品
館内に眠っていたのは「ベン・ハー」「羅生門」「ローマの休日」「地獄門」などのB2判ポスターや立て看板用の短冊形ポスターなど約70点。
同館では上映作品の宣伝用ポスターを破棄しないことをポリシーとしており、ロビーで閲覧できる映画専門誌「キネマ旬報」も1970年代からのバックナンバーをそろえている。同館の根岸輝尚社長が今後の上映準備のため全く別の資料を探していたところ、倉庫奥に保管されているポスターなどを偶然見つけたという。
9月22日には、資料の活用法や保管方法を探ろうと福井在住の映画愛好家や学術機関の調査員を同館に招いた。愛好家は「昔は映画館が配給会社からポスターを買い取っていたそうだが、盗難被害に遭うこともしばしばだったと聞く」と話す。
今回の「発掘」では配給会社から購入したポスターを基にした同館オリジナル品も見つかった。看板職人が出演者の顔を描いたりタイトル文字などをレタリングしたりした物で、根岸社長は「必要最低限の枚数だけ購入して手描きで作成したのでは。買うより描いた方が安い時代だったのかもしれない」と推察する。
保存状態は良好で、調査員も「専門家の間でも紙の資料は保存が難しいとされるが、確認した限りではカビや虫食いなど大きな傷みは見つからなかった。倉庫の奥という保管場所が良かったのでは」と舌を巻く。
良好な状態を保つには、大判のクリアファイルや平置きできる棚などをそろえ、湿気や雨漏りを避けられる場所を確保する必要があるという。根岸社長は「場所の確保や資料の追加調査などの費用が掛かると分かっただけでも収穫だった。今すぐ大掛かりなことはできないが、まずは館内やSNSなどで披露し、50年前の映画文化を多くの人に知ってもらう機会をつくりたい」とプランを描く。