福井鉄道に4月上旬、電車の運転台で体験できる運転シミュレーターがお目見えした。
メニュー画面。普通列車は、福井城址大名町~福井駅の通称「ヒゲ線」のコースも含む
名称は「福井鉄道600形運転シミュレータ」で、北府駅構内に保存されているモハ602の運転台に機材を設置した。同社福武線のたけふ新~田原町間などの運転を、実車のマスターコントローラー(マスコン)、ブレーキ、警笛などを使って疑似体験できる。
メニューは、たけふ新~田原町の上り・下り普通列車と急行列車、北府~たけふ新の出入庫で、それぞれに初級と上級のコースを設けた。上級は実物の速度計を使って速度調整するコースで、制限速度を超えるとATS(自動列車停止装置)が作動したり、マスコンから手を離すとデッドマン装置が働いたりする仕掛けを盛り込む。
県外の専門業者の協力で実現にこぎ着けた。鉄道営業部の白崎正臣さんによると、素材収集のために臨時列車のダイヤを組み、好天を狙って撮影を行ったという。運転士経験のある白崎さんは「鉄道線と軌道線、両方の体験ができるのは当社ならでは。実車経験がある私ですら驚くほどのマニアックな出来になった」と笑顔を見せる。
モハ602は1970年代、名古屋市交通局名城線の車両としてデビューし、1998(平成10)年、福井鉄道に入線した。入線に当たり両運転台化や集電方式変更などの改造を受け、現役時代はビアホール電車「ビア電」や「居酒屋電車」などのイベント列車にも用いられた。
白崎さんは「鉄道車両としてもユニークな経歴のあるモハ602が、廃車を免れて運転シミュレーターという新たな道を歩み始めた。この車両の経歴を知る鉄道ファンなら胸に熱いものが込み上げてくるのでは」と話す。
4月28日、「福井鉄道北府駅鉄道ミュージアム 激アツ! 見学・撮影・体験ツアー2024」で一般向けに初公開し、1人当たり10分程度の体験時間を設ける。起点から終点まで通して体験したときの所要時間は約1時間で、今後、事前予約制で受け入れ体制を整える予定という。
同ツアーの参加料は8,000円。定員20人。