福井在住の10代~20代で構成する劇団「雨とツルギ」の第4回公演「明日のハナコ」が3月16日・17日、鯖江市地域交流センター市民ホール「つつじ」(鯖江市本町2)で上演される。
物語は、1948(昭和23)年の福井地震を起点に福井の現代史をなぞる構成で、公演を控えたある高校の演劇部を舞台に女子生徒2人が自らの将来像について考える姿を描く。出演は、同劇団のれなこさん、福井大医学部・福井県立大合同演劇部劇団「くらげ」のはるのさん。
同作は2021年秋、福井県高校演劇祭で福井農林高演劇部が初演した創作作品。当初、地元ケーブルテレビ局での収録放映が決まっていたが、原子力発電所に関するエピソードが盛り込まれていることや、昭和時代の新聞記事を引用した差別表現とされる語句があることなどが関係者に問題視され、放映が取りやめとなった。
同劇団は2018(平成30)年に旗揚げし、映画化もされた高校演劇「アルプススタンドのはしの方」上演などの活動を展開してきた。同劇団代表で同部OBの小牧照さんによると、マスコミやSNSなどで賛否両論が湧き起こった「明日のハナコ」上演には、「ノーリスクの上演というわけにはいかないかもしれない」という葛藤があったという。
小牧さんの1年後輩で今回の公演の演出を務める尾下詩穂さんは「2021年の演劇祭は新型コロナで観客なしの開催だったため、他校の生徒や保護者も含めテレビ放映を楽しみにしていた人がいつも以上に多かったのでは。私自身、原発のことを詳しく言えるほどの立場ではないが、とても大切なことを見る側に伝える後輩たちの作品が封印されていいのかという疑問はあった」と話す。
尾下さんによると、放映取りやめが報道されて以降、作品に関心を寄せる全国の演劇愛好者などが台本の朗読会や上演などを行っているという。福井県内でもこれまで、朗読会が数回開かれたが、役者による舞台披露は県高校演劇祭以来3年ぶり。上演に当たっては初演時の音源を使い、劇団オリジナルの演出を加えた舞台づくりを目指すという。
小牧さんは「テレビ放映がお蔵入りになったことが上演のきっかけではあるが、台本はとても素晴らしい表現でストレートなメッセージを含んでいる。フラットな視点で鑑賞してもらえたら」と来場を呼びかける。
開演日時は、16日=19時、17日=11時、15時。チケット料金は、一般=1,500円、小学生以上=500円。