福井市のグリフィス記念館ふれあい広場(福井市中央3)で7月15日、トークセッション「浜町邂逅(かいこう)」が行われた。
総菜などを買い求める客でにぎわう「開花亭 kuri-ya」の店内
同館周辺の通称「浜町」エリアに開業する総菜店「開花亭 kuri-ya」(中央3)と、複合施設「CRAFT BRIDGE」(中央3)の開業記念イベントとして両施設のオーナーらが企画した。
新国立競技場の設計を手掛ける建築家・隈研吾さん、デザインプロデューサー・黒崎輝男さん、社会デザイン研究者・三浦展(あつし)さんが登壇。店舗設計やコンテスト審査員などを通じて同エリアに関わりを持つ3人が「浜町セレンディピティー」をテーマに、福井の食や工芸、まちづくりの未来像などを話し合った。
セッションで、隈さんは「浜町は伝統的建築物と高度経済成長期の建物が並ぶエリアで、異なる『クラフト感』が混在しているのが興味深い」と話し、三浦さんは「初めて浜町を訪れたのは4年ほど前。当時は想像できなかったが、旧知の黒崎さんが関わり、スピード感とともに町が変わっていくことに驚いた」などと印象を話した。
質疑応答の時間もあり、越前和紙の職人からの「懸命に物作りをしているが、作った物が本当に流通するのか疑問に感じることがある」という質問に、黒崎さんは「物を単体と捉えず、何かしらのテーマの下で複合的に組み合わせる企画を進めては。物と情報をうまく回せば、福井でもいい動きが生まれる可能性がある」と助言した。
イベントでは、西川一誠福井県知事ら来賓によるテープカットや、内覧会を兼ねたレセプションなども行われた。企画メンバーの一人で「開花亭 kuri-ya」の開発毅社長は「民間主導のまちづくりを、トップクラスのクリエーター3人が支えてくださるのがありがたい。これからが浜町再興の勝負所で、会場のみなさんにもさまざまな面で応援を頂ければ」と呼び掛けた。
「開花亭 kuri-ya」は、1890(明治23)年創業の料亭「浜町 開花亭」(中央3)姉妹店で、隈さんが設計を手掛けた。店舗面積は約15坪。料亭の職人が現代風にアレンジした「一乗谷のハンバーグ」(928円)などの総菜、「全国からよりすぐった」という食料雑貨、福井県産をメインとする農作物などを販売する。
「CRAFT BRIDGE」は、バー、ベーカリー、シェアオフィス「MIDORI.so 福井」などを備えた複合施設で、「工芸の未来へ橋を架ける」をコンセプトにする。延べ床面積は約90坪。黒崎さんや越前市在住のデザイナー・内田裕規さんらが、築約50年のビルを約5カ月掛けて改装した。
「開花亭 kuri-ya」は7月16日に、「CRAFT BRIDGE」は8月中に、正式オープンを予定する。