
福井市在住のフォトグラファー「Akine Coco」さんの作品集「アニメのワンシーンのように。Recollections」が3月12日、芸術新聞社(東京都)から発売される。
福井県やその近隣で撮った日常の何気ない風景をアニメ映像のような仕上がりで発表するAkine Cocoさん。作品集は1作目の「アニメのワンシーンのように。」以来4年ぶりで、回想や回顧などを意味する「リコレクションズ」をタイトルに添えた。
Akine Cocoさんによると、同書の出版は前作の担当編集者からのオファーがきっかけという。「1作目の時の編集者さんの熱量に感動し、『2作目の話があればこの人と一緒に作りたい』と思っていた。本格的に準備を始めたのは半年ほど前で、双方がアイデアを練る中で、前作と異なる新たな表現というコンセプトがまとまった」と明かす。
新たな表現のキーワードは「アニメ映画のワンシーンのようなシネマチックな仕上がり」。映画館のスクリーンに投影される映像の質感を意識し、撮影後に行う現像の工程も見直した。撮影手法の面でも、スナップ写真をベースに物語性をより感じられるような絵作りを追求したという。
誌面は、「冬の記憶を巡る」「サイレントナイト」「懐深域」「桜色に染まる日常」「アニメのような世界で」の5章構成。前作は夏と秋の風景が中心だったが、同書では冬と春の情景にもボリュームを持たせ、より多面的な角度からAkine Cocoさんの世界に浸れる内容とした。
福井を舞台にした青春小説「千歳くんはラムネ瓶のなか(愛称『チラムネ』)」作者・裕夢さんとの対談も収録した。Akine Cocoさんは「以前からSNS上での交流はあったが、顔合わせは初めて。10代の頃に『福井には何もない』と感じていた者同士が、大人になって地元愛を深めたということを見いだせた対談だった。片や小説で、片や写真で、福井の何気ない場所を描写するという共通点があることも語り合えた」と振り返る。
Akine Cocoさんは、北陸新幹線延伸後も再開発事業が進む福井の町並みにも触れる。「再開発で町の姿が変わる中、その一瞬を切り取った写真を次の世代に伝えたい。私にとって、作品集とは小説のような物語性のある『一組の組み写真』。5年後、10年後に見返して、福井の良さを再発見する手がかりとしてもらえたら」と話す。
仕様はB5判144ページ。価格は2,970円。