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福井の書店が「つながる本ギフト」 青春小説「チラムネ」聖地、新サービス

登録を呼びかける、佐々木さん(左)、石田さん(右)

登録を呼びかける、佐々木さん(左)、石田さん(右)

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 福井市の書店「AKUSHU BOOK&BASE(アクシュ・ブック・アンド・ベース)」(大和田2、TEL 0776-57-2600)が1月10日、新サービス「つながる本ギフト」を始めた。

店内には、「チラムネ」登場人物のパネル、ファンが残したメッセージなど、作品ゆかりのアイテムが並ぶ

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 定額の月会費を支払うことで、書店員ら福井ゆかりの人々が選書した本が毎月1冊、「ギフト」として配送されるサービス。街中の書店が全国的に減少の一途をたどる中、本の楽しさを次世代に伝えたり、未知の本との出合いを提供したりしたいと同店が企画した。

 会費は月3,300円。コースとして、本との新しい出合いを求める人たちを対象にした「本を愛する私へのギフト」、病院、こども園、児童養護施設などに本を届ける「本の楽しさを広めるあの子へのギフト」の2つを設ける。クレジットカード決済によるウェブサイト申し込みと、口座振替による店頭申し込みで受け付ける。

 同店は2020年11月、書店と会員制スペースを組み合わせた複合型書店として開店。書籍販売と並行して本を通した学びの場の提供を目指していたが、同年初めからの新型コロナ拡大などの影響で、「勉強会開催など当初想定の展開がなかなか進まず、昨年夏、いったんは閉店の方針が決まった」(店長の石田美香さん)という。

 SNSなどでの閉店の告知に、熱心な書店ファンが反応した。同店のある商業施設「ラブリーパートナー エルパ」は、福井を舞台にしたライトノベル「千歳(ちとせ)くんはラムネ瓶(びん)のなか(愛称:チラムネ)」にも登場するショッピングセンター。同施設とのコラボイベントの時には、県内外のチラムネファンが「聖地巡礼」として同店を訪れたという。

 チラムネファンらのエールを受け、施設を運営する協同組合「福井ショッピングモール」(同)が動いた。常務理事の佐々木国雄さんは「書店は本を買う場であるだけでなく、待ち合わせなどお客さまが集う憩いの場でもあり、ショッピングセンターには欠かせない存在。開店以来、お客さまと店員との交流を見てきて、本に関わる仕事に携わる人たちの活躍の場を奪っていいのかという思いも込み上げた」と振り返る。

 理事会の承認を得て昨年12月、組合直営での再出発が決まったものの、書店業界を取り巻く環境は依然として厳しい。公益社団法人「全国出版協会 出版科学研究所」の発表(アルメディア調査)によると、日本の書店数は2000(平成12)年からの20年で、約2万1000店から半減した。一般的な書店の粗利率は20%ほど(日本図書館協会調べ)の水準ともされる。

 そこで同店が掲げたのが、「来店客との密な関係づくりに力を入れる書店」(佐々木さん)を強みに展開する同サービスの取り組み。会費のおよそ半分を書籍購入費、残りを店舗運営の費用に充てるという内訳で、「遠方にいても好きな書店を支えることのできる、ファンと書店との継続的な関係づくり」(同)の構築を目指す。

 「ギフトと異なる形でも店を応援したい」という人に向け、同サービスのキービジュアルなどをあしらったステッカー(大サイズ=1,100円、小サイズ=330円)の店頭販売も始めた。佐々木さんは書店の持つ文化発信基地的な役割を引き合いに、「つながる本ギフトは、SDGsが掲げる『質の高い教育をみんなに』の趣旨にも沿うサービス。SDGsに取り組む企業の賛同も得られれば」と期待を込める。

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