(一社)福井環境研究開発は10月11日(土)、「ざわザワ高校 ~海の未来をつなぐ哲学~」の第6回授業を開催しました。今回は少数での哲学対話に挑戦。ジャーナリストの堀潤さん(学級委員長)、哲学者の岩内章太郎さん(豊橋技術科学大学准教授)と共に、高校生5人が「自由」をテーマにこれまで以上に活発な議論を行いました。この海洋教育プログラムは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環で行っています。

・開催概要:「ざわザワ高校 ~海の未来をつなぐ哲学~」第6回授業
・日程:2025年10月11日(土)
・開催場所:敦賀市役所(敦賀市)
・参加者:堀潤さん(学級委員長、MC)、岩内章太郎さん(豊橋技術科学大学准教授)、高校生5人
・番組:「ざわザワ高校 ~海の未来を変える哲学~#6」
〇放送 福井テレビ 12/27(土)10:55~11:25 ※予定
TVer
https://tver.jp/
今回の哲学対話のテーマは「自由」。哲学講師の岩内さんは生徒たちに「自由というテーマを選んだ理由は色々あるが、冒頭は自分の体験から思いつく”自由の本質”について対話をしよう」と理由を伏せてのスタートになりました。最初にMCの堀さんが「アナウンサーの時に夏休みなどの長期休暇では髪の毛を染めていた。会社員時代は制約も多く自由へのあこがれが強かった。」というエピソードを披露し場を和ませ
ました。生徒からは「休暇中に家でゴロゴロしたり、どこかに遊びに行ったりと”選択肢”が多い時に自由を感じる」「小、中、高校と成長することで”ルール”を学び一人でも”出来る”ことが増えたから自由を感じる」「表現の自由というがどこかで”制限”がかかっている気もする、アメリカでは言論が”抑圧”されている」などの意見が出ました。岩内さんからは「私が学生のころはルールを破ることこそ自由だと思っていたがそのことについてはどう思うか?」との質問には「ルールを破りたいと感じる時は不満があるときで、今は不満を感じていないのであまり思わない」「昔はルールを破る人がモテていたという話もあるが今は全然モテない」などの意見が出ました。およそ1時間の対話の中で生徒たちが導き出した「自由の本質」とは「ルールや制限の中で何かを選択したり決定したり出来る事」で、「出来る」ためには「選択肢がある環境」「自分の意思が伴っている」「それを行う能力がある」「自分で責任を取れる範囲内」の4つの条件が必要であると結論付けました。
そして普段の哲学対話だったらここで終了ですが、岩内さんから「今回は本質観取の応用バージョンの高度な哲学対話を行いたい」と発表がありました。

これまでの哲学対話では生徒たちの実体験や知っている知識を基に本質観取を行ってきましたが、今回はジャーナリストの堀潤さんが日本や世界各地を取材して得た「自由にまつわるエピソード」を生徒たちに披露しそこから一歩先にある「自由の本質」を目指すことになりました。
生徒からは「私だけでは知っていることが少ないので考えを深めたい」「不安でもあるけど未知の世界を知る楽しみがある」といった前向きな意見が出て後半の授業がスタートしました。
堀さんからの最初の問いは「平等に選択権が与えられているというが実は演出されている可能性はないか?事例としてスーパーで販売しているミートソースは10種類販売している店と2種類だけ販売している店では2種類だけの方がよく売れるという統計があるがそれは買いやすいからである。これは自分達で選択しているようだが実は選ばされているということではないか?これは本当に自由なのか?」というものでした。岩内さんからもある哲学者の「権力者は君たちを見ているが君たちから権力者は見えない」という言葉を紹介し「決められた中で自由に生かされている可能性」について問われました。生徒たちからは「全く考えたことがなかった。校則に不満があるとかいう次元ではなく考えすら及ばなかった」「アンケートを探求活動で行ったことがあるがその時に権力者側だった気がする。自分のほしい答えを集めたいと思い、心理学的に選びやすい選択肢を用意したことがあるがそれと似ている気がする」「自由すぎると頭が混乱する。職業選択もたくさんある中から一つを選ばなくてはいけないが、かえって頭の中が不明瞭になってしまう」といった意見が出ました。それに対し堀さんは「国のあり方にも共通する。強いリーダーがいて全ての方向性を定めてもらう独裁国のあり方がいいか、意見のすれ違いや衝突もあるが自分達で自由にリーダーを選ぶ国がいいか」という問いが再び出されました。生徒からは「民主主義よりも一人のリーダーシップを持つ人物がいるほうが話が早いのではないか?みんなで話し合っても物事が進まないことが多い」「多様性の時代になって考えることが増えているが少数派の人たちを助けられる国であってほしい」と言った様々な意見がでました。
授業の内容は12月27日放送の番組内で紹介します。
学級委員長・堀潤さん
敦賀は自由を求めて難民が海を超えてやってきた場所。そこで自由について疲れるくらい考えることは意義深いことだと思います。日本にいると中々わからないかもしれないがもっと世界に目をむけてほしいと感じました。
哲学講師・岩内章太郎さん
今回は大学レベルの話をしたが、その本質の一つは考え方を知ってほしかったということです。最終的な結論は出ていないかもしれないがそれが学問。3時間も自由に一つの物事について考えられるのは幸せなことだともわかってほしいです。
高校生の皆さん
・国のあり方などについても学ぶことができて、今後は政党の政策にも注目してみていきたいです。
・今回はいつもよりも人数が少ない分難しいことをやったが充実感がありました。
・権力や社会のあり方について話が広がっていって、自分が想像もつかないような話を知ることができてよかったです。
「ざわザワ高校」が目指すのは、海や沿岸地域の「新しい可能性」の発見です。今回は「自由」という言葉を通して哲学対話を行い、高校生の視野を広げ、地域の課題や可能性を俯瞰して考えてもらいました。今後も生徒たちは、多様な人々との対話を通じて、海の可能性を探る旅を続けていきます。
<団体概要>
団体名称:一般社団法人福井環境研究開発
URL :
https://fukui.uminohi.jp/
活動内容:北は東尋坊にみる奇岩断崖が続く越前海岸、南は優美なリアス式海岸の若狭湾と変化に富んだ福井県の海は、北前船などの海上交通の要衝として古くから栄えてきました。また、寒流と暖流が交わる福井県沖は越前がにや若狭ガレイなど海産物の宝庫。(一社)福井環境研究開発では、海に親しみ、大切にする心を育む運動を進めています。
日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
https://uminohi.jp/