単行本「100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集」が10月20日、講談社(東京都文京区)から出版される。
来館者の調査・研究を支援する、同館の調査・相談カウンター。「覚え違い」だけでなく、「信号機はなぜ、赤・黄・青の3色なのか」「ドッジボールの『ドッジ』の由来は」などの質問も寄せられる
福井県立図書館の調査・相談カウンターに寄せられた質問などを基にした、同館ホームページの「覚え違いタイトル集」コーナーをまとめた同書。同コーナーに掲載の事例から92点をピックアップし、各書籍の概要や受賞歴などの小ネタ、司書の一言コメント、図書館のレファレンス(=調べ物)サービス紹介などを追加し構成する。
同コーナーを手掛ける4代目担当職員の井藤久美さんによると、書籍化の打診があったのは今年2月ごろ。「これまでにも何度か書籍化の話は頂いていたが、内部の体制づくりなどの面で辞退をしていた。今回、担当編集者さんから熱のこもった手紙を頂いたことや、初代担当職員が異動で当館に戻ってきたタイミングなどが重なり、出版に向けて準備を進められることになった」と話す。
コーナー開始は2007(平成19)年で、カウンターに寄せられた質問を職員同士で共有するために作成していたエクセルファイルが始まりだった。「図書館に来ても目指す本が見つからずそのまま帰る方がいるのではと考えた。ホームページで調べ物事例を紹介すれば、カウンターをより気軽に使ってもらえるのではという話になった」と振り返る。
カウンターでは来館者の持つ断片的な情報をヒアリングしながら、共に「正解」を探し出していく。「蔵書検索だけでなく、検索エンジンも活用して本と関係なさそうな情報も拾い上げていく。書影(=本の表紙画像)のおぼろげな記憶から正解にたどり着くこともある」と井藤さん。
長いときには30分ほどかかるという解明の足取りを基に、年に3、4回ペースでコーナーの更新を行う。現在、他館からの情報提供なども含め893事例が掲載されており、最新の更新(8月24日)では、「たんていの子」から「名探偵コナン」、「湊かなえのタイトルに月が入っている本」から「往復書簡」を探し出した事例などを掲載した。
同館の取り組みはメディアで取り上げられることもしばしばで、そのたび同コーナーのページビュー(PV)が上昇するという。8月中旬、ツイッターで同書の発売が話題になると、同館を含む館内3施設の1日当たりPVが普段の14倍に跳ね上がった。「今年8月の総PVのうち6割が『覚え違い』へのアクセスだった。毎回の更新を楽しみにしている方はもとより、SNSで話題になるたびコーナーの存在を初めて知ってくださる方が増えるのがうれしい」
タイトルは、同社が出版する佐野洋子さんの絵本「100万回生きたねこ」の覚え違いエピソードにちなんだ。井藤さんは「出版社さんの力添えで読み物として面白いと思ってもらえる出来になったと実感している。イラストも秀逸なので楽しんでもらえれば」と呼び掛け、「全国の図書館のレファレンス機能を気軽に利用してもらえるきっかけづくりとなれば、本書が出た意義があると思う」と話す。
仕様は四六判、192ページ。価格は1,200円(税別)。