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伝統工芸技術で松葉づえに新風 福井のアイドル、自身の手で製作進める

「さくらいと」のMAIさん(左)。「衣装に合わせて松葉づえの色や蒔絵の柄を考えた。期間限定のレアな姿を見てもらえれば」と話す

「さくらいと」のMAIさん(左)。「衣装に合わせて松葉づえの色や蒔絵の柄を考えた。期間限定のレアな姿を見てもらえれば」と話す

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 福井の地元アイドルが現在、伝統工芸技術で松葉づえを作るプロジェクトに取り組んでいる。

山口さん(左)のアドバイスを受けながら、木工作業に挑むMAIさん(右)

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 プロジェクトに取り組んでいるのは、「福井の伝統工芸応援」を掲げて活動するアイドルユニット「さくらいと」の「MAI」さん。MAIさんは現在、6月に受傷した全治6カ月の左足の療養中で、「松葉づえはもともと木製が多い。それなら、福井の伝統工芸とのコラボレーションでオリジナルの松葉づえを作ることができないか」と、職人らに相談を持ち掛けたのがきっかけという。

 MAIさんの「自身のけがを前向きにとらえて活動を続けたい」という思いに、オーダー家具製造「ファニチャーホリック」(越前市大虫町)代表で越前指物の技術を持つ山口祐弘さんと、漆芸品製造販売「柄と繪」(越前市池ノ上町)の蒔絵師(まきえし)・山本由麻さんが応えた。

 プロジェクトは、MAIさん自らが製造工程に関わるという点に特徴がある。「私たちが工房で体験したことを動画などで発信するのも『さくらいと』の活動の一つ。もちろん職人さんに製作を依頼する方が早く完成するが、自分の手で作ることにこそ価値があると考えた」とMAIさん。MAIさんが描いたスケッチ画を基に、山口さんが部材の形状や仕口(=部材同士の合わせ目の構造)などを設計した。

 材料には、軽量で狂いが少なく、漆器の木地としても使われるベイヒバを用いた。8月7日、山口さんの工房で組み立て作業を終えたMAIさんは「(仕口を)なかなかまっすぐ削れないなど予想以上に難しかった。ほんのわずかのずれも許されない世界で、一発勝負で物を仕上げる職人さんの技のすごさを改めて感じた」と振り返る。

 「家具に対する悩みを改善するアイデアを込めるのが私の物作りのコンセプト」と言う山口さんも、「私も一時期、松葉づえ生活を送ったことがあった。ボルトむき出しの松葉づえも当時は当たり前だと感じていたが、指物技術を使えば木ならではの温かみがある物ができることが分かった」と、新たな発見に笑顔を見せる。

 松葉づえは今月中旬頃に山本さんの工房に運び込まれ、MAIさんが拭き漆やサクラ模様の蒔絵などを施して完成となる。MAIさんは「山本さんから道具を貸してもらい、自宅で蒔絵の練習中」と顔をほころばせ、「世界には松葉づえで一生を過ごすという人がたくさんいるはず。伝統工芸のコラボレーションで『マイ松葉づえ』が出来るということが一人でも多くの人に伝われば」と話す。

 松葉づえの完成品は9月5日、福井駅西の多目的広場「ハピテラス」で行われる「ECHIZEN クラフトステーション」のステージイベントでのお披露目を予定する。

 ステージイベントは13時開始。

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