福井市内に本社を置く「益茂(ますも)証券」会長・益永哲郎さんが知人らに送る「ひらがな名前入り和歌はがき」が5万枚を突破した。
過去のはがき送付先をびっしり書き込んだ手帳を披露する益永さん
はがきは名刺交換などで知り合った人たちに送るもので、花の写真の上に相手の名前を織り込んだ自作の和歌を印刷している。和歌を詠む際は、「相手の名前はひらがなで入れる」「伝えたい内容を盛り込む」「相手の人柄なども入れる」「できるだけ全体が首尾一貫するようにする」などのルールを自ら課すという。
益永さんによると、和歌入りはがきを書き始めたのは15年前。「礼状などのはがきは23年前から書いていたが、当時は文字だけで、あるセミナーの受講をきっかけに『はがきにも工夫を』と思い立った」。1年目に年間220枚だった和歌入りはがきの数は右肩上がりで急増し、昨年は年間7400枚にのぼった。
送る相手は直接会った人だけではない。大野市の古民家カフェ&ゲストハウス「Cafe Name came Ono(ナマケモノ)」オーナーの二見祐次さんは「開店の半年ほど前、突然『新聞記事を読んだ』というはがきが届いて驚いた」と振り返る。その後もマスコミなどで二見さんの活動が紹介される度に届くと言い、「実は、益永さんとはいまだ一度もお会いできていない。本人は『趣味ですから』とおっしゃるが、日課にしていること自体がすごい」と舌を巻く。
新聞7紙、月刊誌7誌、フリーペーパー6紙、テレビのローカル番組などを「ネタ元」として毎日チェックを欠かさない。目に留まった記事があればコピーを取り、すき間時間を見つけて作った和歌をスマホで送信し、同社女性社員との「連係プレー」で絵はがきに仕上げる。1首当たり平均5分で作る和歌は、相手の名前と、人柄や記事内容とのすり合わせが腕の見せ所という。
来年末には累計6万枚に達する見込みだ。益永さんは「和歌入りはがきの楽しさは、相手のことや世の中の事情に関心を持つきっかけができること。面と向かっては恥ずかしくて言いづらいほめ言葉を使えるのも魅力で、はがきにすると不思議と照れくささが無くなる」と顔をほころばせる。