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福井・敦賀の高校生が歌手デビュー 地元民謡に「未来志向」の歌詞盛り込み

完成したCDを手にする森野さん。理事長を務めるNPO法人は福井県内で初めて、高校生によるNPO法人として設立された

完成したCDを手にする森野さん。理事長を務めるNPO法人は福井県内で初めて、高校生によるNPO法人として設立された

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 敦賀市在住の高校生が4月6日、地元の新民謡「復興敦賀音頭」の新録版を発表した。

水前寺清子さんが歌うご当地ソング「敦賀とてもすきすき」を手に、笑顔を見せる森野さん。自宅の一室には、昭和時代のレアな歌謡曲や県内の新民謡などのレコードが並ぶ

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 新録版を発表したのは、敦賀高3年で市内のNPO法人「とても敦賀すきすき」理事長の森野巧巳さん。1947(昭和22)年、敦賀空襲からの復興に取り組む市民の支えとなることを目的として敦賀市公民館が選定した楽曲に、新たに自作の歌詞を付けてレコーディングを行った。

 森野さんによると、選定当時の同曲は復興作業に当たる市民の作業歌としても親しまれていたという。長い間レコード化がされず、2009(平成21)年にCDとなって再度日の目を浴びたものの、継承活動が下火となり忘れられた存在となっていたという。

 2023年、地元民謡の保存・継承を目的にNPO法人を設立した森野さん。活動をきっかけに市民団体「復興敦賀音頭を育む会」の顧問にも就任し、北陸新幹線延伸開業記念事業として新録版のボーカルと6番の作詞を担うこととなった。「団体代表の吉川繁敏さんが楽曲選定担当者の息子さんと旧知の仲で、友人の遺志を受け継ぎたいという思いにも突き動かされた」と振り返る。

 小学生時代、テレビから流れてきた美空ひばりの「愛燦燦(さんさん)」に感銘を受けて以来の昭和歌謡好き。作詞に当たり、未来と書いて「さき」と読ませたり、いっそう人情味あふれる敦賀市になってほしいとの願いを込めて「篤(あつ)き情熱」とつづったりするなど、昭和歌謡好きならではの言葉選びにこだわった。「未来志向の歌詞」というテーマの下、北陸新幹線かがやき号を想起させるフレーズも盛り込んだ。

 2月中旬に行ったレコーディングでは、民謡独特の節回しを意識してマイクに向かった。完成したCDを耳にした人たちは普段の森野さんと違う声質に驚き、地元コミュニティーFM局のパーソナリティーが全くの別人として曲紹介をしそうになったり、表敬訪問した米澤光治敦賀市長から感心の声が寄せられたりしたという。

 森野さんは現在、民謡の保存・伝承活動の一環として小中学生対象の民謡踊り講習会「すきっず」も展開する。「民謡は祖父母世代と子ども世代、地域と地域の架け橋となる存在。いずれ敦賀を離れることになる子どもたちがいるかもしれないが、一度離れたとしてもまた地元に帰ってきてほしいと願って活動を続けている」と話す。

 「今の敦賀があるのは、空襲からの復興に尽力した先人のおかげ」とも。欧州や中東などでの武力衝突を引き合いに、森野さんは復興敦賀音頭を平和意識向上の足掛かりとする意欲ものぞかせる。県外大学への進学を志向する一方でUターンの意志は固く、進学後も月1回ペースで帰郷して「すきっず」の指導に当たる予定という。

 CDは、5番までの歌詞によるオリジナル版、カラオケなどを含む全4曲構成。同団体のインスタグラムアカウントで問い合わせを受け付ける。

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