越前町在住の芸術家・西野カインさんが10月23日、自身のライブペインティング作品を出雲大社(島根県出雲市)に奉納した。
はかま姿で制作に取り組む西野さん。「大型作品を描くことが増え、ベニヤ板大のサイズが体になじむようになった」という
油性ペンやアクリル絵の具などを駆使した緻密な作品づくりを得意とする、西野さんの創作活動の一環。出雲大社と、西野さんが向拝の天井画を手がけた賀茂神社(福井市加茂町)が共に大国主大神を祭っていることや、宮司同士がかねて親交があることなどがきっかけとなった。
作品のタイトルは「慈愛」。横約90センチ、縦約180センチの鳥の子紙に、油性ペンとアクリル絵の具を使って描いた。西野さんがしばしばモチーフにするという女性と、日本神話ゆかりの因幡の白兎(しろうさぎ)を盛り込み、水墨画のような透明感あるタッチで仕上げた。
西野さんによると、当日は晴天に恵まれ心地よい環境で創作に取り組めたという。「当初は日本神話ゆかりの人物を据えた作品にしようと考えたが、私らしさを前面に出せればと得意のモチーフに切り替えた。薄めたアクリル絵の具を使って透明感を出したのは今回が初めて。普段はベニヤ板に直接描くことが多く、和紙ならでは表現になった」と話す。
以前から日本神話の世界が好きだったという西野さんは、「境内に足を踏み入れた瞬間、これまでのライブペインティングと全く違う落ち着いた心持ちになれた」とも。まるで空から絵の神が下りてきたような感覚で、スムーズに筆を運ぶことができたという。
30分ほどで作品を仕上げた後、正式参拝し奉納した。西野さんは「宮司の千家尊祐さんからも『かわいらしい絵を描いてくれてありがとう』という感想を頂いた。明るくない話題が少なくない現代社会だが、やはり私は日本が好き。一人の日本人として貴重な経験をさせてもらうことができ、誇らしい気持ち」と声を弾ませる。
作品は約1カ月間、拝殿に展示される予定。