福井県坂井市が現在、市内の博物館「みくに龍翔館」(三国町緑ヶ丘4)リニューアルオープンに向けたふるさと納税を募っている。
プロジェクトはふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」内で展開し、設定寄付額は1,000万円。坂井市企画政策課でふるさと納税を担当する小玉悠太郎さんによると、同サイトに掲載されている福井県内の返礼品では最高額という(7月21日時点)。
今回の返礼品は、かつて北前船に積み込まれ、貨幣や印鑑などの貴重品を衝撃や浸水から守った三国産船箪笥(ふなだんす)のうちの1さお。実施に当たっては返礼品の受け取り辞退を前提とし、ふるさと納税を通じて同館に寄贈してもらう形態を取る。
寄付1,000万円のうち、300万円は船箪笥を所有する近藤古美術(三国町神明2)からの購入費用に、手数料などを差し引いた残額をリニューアルオープン関連事業費にそれぞれ充てる。寄付者には来春のオープニングセレモニー特別招待、感謝状進呈、資料キャプションへの氏名掲載などを計画する。
三国産船箪笥は、文化庁が認定した日本遺産「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間 ~北前船寄港地・船主集落~」の構成文化財「三国箪笥(たんす)」の一種。同館学芸員の角明浩さんは「三国は山形の酒田、新潟の佐渡に並ぶ船箪笥の産地。ただ、三国湊(みくにみなと)は工芸品や指物の需要が多かったことから船箪笥の生産高が他産地に比べて少なく、当館にも所蔵がない希少な存在」と話す。
購入を予定する船箪笥の引き出し裏には三国町崎の船主だった新野家の墨書もあり、角さんは「墨書からも三国ゆかりのたんすであることが分かる。当館では新野家の古文書を所蔵しており、船主が船に持ち込んだ道具が館蔵品に加われば、北前船の寄港地として栄えた三国湊の位置付けをより強く印象付けられるのでは」と期待を込める。
同館は1981(昭和56)年11月開館。だまし絵で知られるオランダの版画家・エッシャーの父で、土木技師のエッセルが手がけた旧龍翔小学校校舎を模した八角形の外観を特徴とする。リニューアル事業では給排水・空調などの建築工事、館内展示の刷新工事などを行い、三国湊や北前船の紹介をより打ち出した展示内容とする予定という。
寄付締め切りは12月31日。