福井のアイドルグループ「せのしすたぁ」が3月26日、現体制での活動を終える。
「せのしすたぁ」は、みかさん・ゆーたんさん・まおさんの3人で構成。2012年10月、福井県坂井市にあるSC「アル・プラザ アミ」(坂井市春江町)を拠点に活動するアイドルグループ「アミ~ガス」の派生ユニットとして誕生後、メンバーチェンジを経て2014年春から現在の体制となった。
3月19日、福井駅西のクラブ「Casa」(福井市中央1)で地元最後となるパフォーマンスを披露した3人。ライブを終えたばかりのメンバーを訪ね、活動の軌跡や今後のプランについて話を聞いた。
ーライブ出演お疲れさまでした。今、18時30分を回ったところですが、いつもより物販の時間が長引きましたね。
みか:今日、実験的にチェキ券を前売りにしてみたので、それで若干時間が長くなっちゃったのかな。一回並んだら、もう一回並ばないといけないというようなルールを決めたので。
いつもだったら一度に3人分撮ったりして、他のメンバーが撮っている間にサインを書いたりするから時間が短縮できるんですけれども。今日のようなルールだと、ファンの方一人一人と長く話せるのはいいんでしょうけれど…今日はそういう話じゃないんですよね(笑)。
ーいきなり脱線してしまいましたね。現体制での福井ライブを終えた率直な感想をお聞かせいただけますか?
みか:福井ではライブをたくさんやっていなかったというのもあって、あまりピンと来てないのが正直なところですね。来週は東京で最後のライブがあるんですけど、それもピンと来てなくて。あんまりよく分からないんですよ。来週で本当に最後なのかなって。
-みかさんは3月26日、現体制終了とともに「アイドル卒業」となるわけですが、ライブのMCでは卒業をあまり重く受け止めていないという話でしたよね。
みか:そうなんです。あまり重く受け止めてなくって。永遠のお別れみたいな言い方もされたんですけど、別に死ぬわけじゃないですし。私はオタクじゃないから、皆さんの気持ちがどうなのかは分からないんですけど。
友達でも何でもない、割と遠くの存在の人が1人辞めるというところで、何でみんなそんなに悲しむんだろうって。でも、そう思ってもらえるのはうれしいし、距離がそれだけ近かったってことなんでしょうね。
ー「今日、どういうことを考えて歌っていたのか」という質問も持ってきたのですが、それもあまり意識してなかったと。
みか:あんまり考えてなかったですね。いつも通り、みんな頑張ってオイオイって声上げてるなあって感じで(笑)。最後だからみんな頑張ってくれてるんだろうなあって思いながら見てました。
ーファンの方の反応について「いつもとちょっと違うな」と思いました? モッシュやリフトって、今まで福井ではあまり見られなかったと思うのですが。
みか:そうですね。最後だからっていうのがあったのかもしれません。頑張ってくれたんだろうなって。かわいいですよね、いい大人が(笑)。オタクってマジでかわいいなって思います。
-アミ~ガス加入から通算して4年間アイドル活動をやってきてファンの方といろいろな話をして、何となくオタクの正体って分かりました?
みか:分かりました。だいたい。
ーアミ~ガスに入ったのは、アミでアルバイトしていたのがきっかけだったんですよね。
みか:そうです。店内でアミ~ガスが「チャレンジライブ」というのをやっていて、休憩の時に時間が合えば見に行って「あ、いい曲だな」って。
たまたま従業員限定ライブみたいなのをしてくれたことがあって、それを見に行ったのがきっかけですね。当時のアミ~ガスに、今はいないんですけど仲の良かった子がいたというのも見に行っていた理由の一つです。
ーでもその時はオタクだったというわけではないんですよね。
みか:そうです。もともとそんなにアイドルが好きだったというわけじゃなくて、何となく「いいな」って。その時は全然アイドル気にしてなかったですね。AKB48の初期の時ぐらいは好きだったんですけど、そんなライブに行くようなものでもなかったし。まず「アイドルに会える」という考えに至らなかったんですよ。
自分がアイドル活動をするようになってから「すごい有名人でも行けば会えるんだ」って思って、そこからですね。でんぱ組.incさんを好きになって、でんぱさんのライブに行ったりとかチェキ会に行ったりとか。
ーいわゆる「ヲタ活」を始めたと。
みか:そうですね。それまで「会える」っていうことを知らなくて。今だったら、気になる芸能人がいると「何かイベントあるかな」って調べたりしますよ。トークショーとかやってるんですよね。調べて「行ってみたいなあ」って(笑)。
ー普通のヲタ活じゃないですか(笑)。
みか:そうそう。「会えるんだあ、芸能人って」と思って。
ーそうすると、公式ホームページの卒業発表メッセージに書いてあった「アイドルを目指してたわけではないのに4年間やってこられた」というのは、まさに本音の言葉なんですね。
みか:4年間やってこられた理由は本当に自分でもよく分からないし、よく辞めなかったなって思います。
ーその理由を知りたいです。どうして辞めなかったのでしょう?
みか:私、すごくオタクの人に思い入れが強くて。強いというか本当にオタクの人が好きなんですよ。私がそんな感じだから、オタクの人たちも近い存在として感じてくれたのかなって。
私のファンって根強い人が多くて、今来てくれている人もあんまり新規の人はいないんですよね。2年とか3年とか、最初から見てくれている人ばかりで。
私からしたら、どうして応援してくれているのか分からないし、分からないのに応援してくれてプレゼントもいっぱい頂けたし。だから「何か恩返しできたらな」と思ってファンイベントを企画したこともありました。
ーオタクの皆さんの人間性が好きだというわけですね。
みか:そうですね。本当にありがたいと思うので。もうちょっと距離を置けば良かったのかなとも思うんですけど、オタクに本当に感情が入っちゃって。チェキとかも普通のアイドルだったら「ありがとう、じゃあねー」ってサラリとできるんでしょうけど、私の性格上、それができないから困っちゃった。
それで、実はこれまで3~4回「辞める」って言ったんですけど辞められなかったんですよね(笑)。辞められなかったっていうのが本音で、今ようやく卒業できる時期になった。それだけです。タイミングをうかがっていたっていうか(笑)。
多分、まおもそれを分かっているから「申し訳ない」とか「幸せになって」って言ってくれてるんだろうなと思います。「私がずっと引き止めてたんだ」とも思ってるんじゃないかな。
ーここまで来るのにいろいろあったわけなんですね。
みか:本当は大学卒業の時に辞められてたら良かったんですけどね。大学卒業とアイドル卒業、タイミングとして一緒に合わせることができていれば。
-実はその話もちょっと引っかかっていました。TIF(東京アイドルフェスティバル)出演が決まった時の取材を思い出したんです。当時、みかさんは大学4年生で「就活は何とかなるかな」と話していて。あの話を聞いて、アイドルとして生きる覚悟を決めたのかなって。
みか:なんてったって私は飽きやすい性格なんですけど(笑)、大学卒業と同時期に辞めるとしたら自分の中で不完全燃焼という気持ちもどこかにあったんですよ。だから「じゃあ1年だけはやる」って決めて今に至ったわけです。
ーでは、飽きやすい性格というのが卒業を決めた理由?
みか:レベル的にすごく売れていたら話は別かもしれないし、この規模っていったら語弊があるかもしれないんですけど…この規模が自分の中では限界かなとちょっと思いました。福井のライブで100人規模くらいでしょう。この状態が3年続いてもう限界かなって。体力的にも(笑)。
ー若いのに「体力的に」って(笑)。
みか:疲れるんですよ、本当に。普通の女の子として幸せになりたいというのが一番の本音で。「青春」とまでは言わないけど、いい年をアイドル活動にささげちゃったから、田舎の女の子として普通に生きたいなって(笑)。
ーみかさんが卒業を発表してから、まおさんがみかさんのイラストをツイッターにアップしてますよね。みかさんの好きな曲が「ごめんね。ダーリン」とのことなんですが、今日、アミ~ガスとのシャッフルユニットで早々に「ごめんね」が出たでしょう。あの時、みかさんの中で気持ちが高ぶったりしなかったですか?
みか:「ごめんね」が好きすぎて、ライブで何度も何度もやってるんですよ。好きなんです本当に。私がアミ~ガスに入る前からあった曲で、一番好きな曲で。アミ~ガスのアルバムもずっと録り直していなかったから、本当に最近になってやっと自分の声が入って。4年間活動をやってきて一番うれしい出来事だったな。
-「ごめんね」の歌詞で、みかさん自身の体験が重なっている部分というのはあるんですか?
みか:それは全く無いんですけど、ただ単純に恋愛の歌が好きだから「好き」って感じです(笑)。
-「ごめんね」の中で「恋は気まぐれで 終わりは来るもの」っていう歌詞がありますよね。あれは恋の話ですけど、みかさんのアイドルに対する考え方や生き方と重なっているのかなとも思いました。
みか:それは無いんですけど、すごくいいなって思って。ただただ好きで。
-4年間のアイドル活動、せのしすたぁとしては3年間活動をしてきて、みかさんの中で一番「優勝」したライブって何ですか? いろんなイベントに出ましたよね。フェスに出たり対バンをやったり。最近だとライムベリーさんとかRYUKYU IDOLさんとか、ちょっと前だと生ハムと焼うどんさんとの共演もありましたし。いろいろあった中で記憶に残っているライブってありますか?
みか:やばい…そういうのって出てこないんですよ。そういうの無いんですよね。心に残ったことを聞かれるのが一番苦手で…無いんですこれが(笑)。これ答えた方がいいですか(笑)。無いです。無いですっていうか、全部のライブを同じテンションでやっていたので、どれがどうとか言えないかな。
ーハコが大きいとか小さいとか、屋外とか中とか地下とか関係なくいつも自然体でやっていたわけですね。
みか:そうですね。いつも同じテンションでやっていました。いいのか悪いのか分からないけど、大きい所でも緊張しなかったし…答えた方がいいならTIFって言っておきます。一応TIFってことで(笑)。
-最後になりますが、みかさんにとってのアイドルって何でしょう? アイドルを卒業して田舎の女の子として生きていくという話でしたが、これからは一人のファンとしてアイドルを見に行く立場にもなるわけですよね。見る側と演じる側両方の視点に立てた福井の女の子の実感から、アイドルを語ってもらうとすれば。
みか:アイドルは元気をくれる人…かな。うーん、なんて言ったらいいんだろう…元気くれる人って言葉やばいですよね(笑)。
私、前にすごく落ち込んだ時があって、めちゃくちゃに「ほんとにだめだ」って思った時にでんぱさんのライブに行ったんですよ。友だちもいないし、1人泣きながら見ていたんですけど(笑)。そうしたら、何かすごくいいなと思って。こんなに頑張っているんだったら自分も頑張らなくちゃって思えて。
自分を応援してくれてた人にその元気を与えられたかは不明ですけど…生きる力というか何と言うか…いい言葉にしてくださいよ、生きる力というか生きる希望というか。
ー乃木坂46の歌みたいですね(笑)。まさに「君の名は希望」。
みか:そうですね。生きる希望ですよね。どれだけアイドルがいるか分からないし、自称アイドルと言えばみんなアイドルになっちゃうけど、ただの普通の子がステージに立ったら誰かの生きる希望になるというのはすごいですよね。そういう存在ですよね、アイドルって。
福井のアイドル「せのしすたぁ」 地元で現体制最後のライブ(福井経済新聞)
福井のアイドル「せのしすたぁ」 メモリアルインタビュー(2) -ゆーたん編-(福井経済新聞)