福井市の「E&Cギャラリー」(福井市問屋町3、TEL 0776-27-0207)で10月4日、展覧会「WArtist-越前和紙を拓(ひら)く-」が始まった。
会期初日にはギャラリートークを行い、出展作家が作品のテーマや技法を解説した
文化庁の「大学を活用した文化芸術推進事業」の一環で、福井大文京キャンパス(文京3)で開講中の「アートマスター キュレーション講座」受講者6人が企画した。「あいちトリエンナーレ」などを手掛けた大阪電気通信大(大阪府四條畷市)教授の原久子さんが指導に当たり、「ふくいのために、アートができること。」を展覧会テーマに掲げた。
テーマを具現化する「媒体」として浮上したのが、福井の伝統的工芸品である越前和紙だった。受講者は、知人や福井のクリエーターガイドブック「CRU(クルー)」などを通じて作家を選び、福井ゆかりの10人に新作制作を依頼した。
出展作家には、建築家、彫刻家、ファッションデザイナーなど、和紙とはあまりなじみのない面々も名を連ねた。受講者の一人で、同大教育地域科学部2年の高橋葵彩(あおい)さんは「ふとした雑談から、普段の仕事で和紙を使わない人に声を掛けると、思わぬ発見が生まれるのではという話になった」と振り返る。
会場には油彩画やオブジェなど約20点が並ぶ。グラフィックデザイナーの真田悦子さんは、ステンシル(=型抜き)技法を用いた作品「伝説」を展示した。「川に現れた女神が村人に紙すきを教えたという、越前和紙の起源にまつわる伝説に神秘性を感じた。和紙の風合いと対照的なステンシルと蛍光スプレーを使い、神話から得たイメージを形にした」と話す。
同展に協賛した文具店「角文」(文京4)社長の角谷恒彦さんは「同時期に県立美術館で『レンブラント版画名品展』が開かれ、アートと越前和紙の関係に注目が集まっている。本展の作品を通して、アート素材としての和紙の可能性を感じてもらえれば」と呼び掛ける。
同講座は6月26日から10月下旬までの全10回で、作家に与えられた実制作期間は1カ月足らずだったという。原さんは「短い制作期間にもかかわらず、作家や業界関係者の理解と協力で開催にこぎ着けられた。受講生の皆さんも、講座の合間を縫って主体的に準備を重ねてくれた。この経験を生かし、福井でアートイベントを次々と生み出してほしい」と期待を寄せる。
営業時間は12時~19時(金曜は21時まで)。火曜・水曜定休。入場無料。今月25日まで。