
福井鉄道が8月1日夜、イベント列車「フェニックス花火大作戦」を運行した。
「鳥羽中駅付近の急カーブは旧日本軍の射撃場を避けて敷設された名残」など、同社福武線の歴史を話す白崎さん
福井市内で開催された「福井フェニックス花火2025」に合わせ、同社が初めて開催した。市内の足羽(あすわ)川に架かる鉄道道路併用橋「幸橋」に10分間列車を止めて花火大会のフィナーレを観賞するというイベントで、県内外から親子連れなど12組28人が参加した。
列車はたけふ新駅19時11分発の臨時ダイヤで、「フクラム」の愛称で親しまれるF1000形3両編成で運行した。幸橋には19時50分ごろに到着し、参加者は車内灯が消えた列車内から夜空を彩る大輪の花火を観賞した。現地に向かう車中では、鉄道営業部の白崎正臣さんによる沿線ガイドや、カプセルトイによる抽選会などもあった。
白崎さんによると、2、3年前から企画の話が持ち上がっていたという。「『幸橋の上に電車を停めて花火を見たらきっときれいなのでは』という上司の声がきっかけ。ただ、30分に1本のペースで列車が走るダイヤの中で長時間列車を止めるわけにはいかない。停車時間は10分程度だろうと考え、スパイ映画にちなんだ『大作戦』というキーワードからイベントが実現した」と話す。
6月下旬、同社ウェブサイトなどで募集告知を始めたところ、1日足らずで定員に達した。「『一部のマニアの人たちに受ければ』というくらいに考えていたら予想外の反響になり驚いた。半ば冗談でスタートしたような企画を面白がってくれるお客さんがいることが分かり、私たちも手応えを得られた」と白崎さん。
福井市在住という30代男性は鉄道好きの子どもらと家族3人で参加した。「車内から見る花火は思った以上にきれいで、今回のようなイベントでなければ体験できない角度からの花火観賞だった。子どもは抽選会で(同社踏切看板を模した)『黄金のジャンジャンクリアファイル』が当たって満足そうな様子だった」と振り返る。
たけふ新出発後の車内アナウンスで、「花火を見られるかどうかは検証していない」と冗談めかし笑いを誘った白崎さん。「初めての開催で不安もあったが、『花火大会のフィナーレを車内から観賞する』というミッションを無事クリアできほっとした。今回の結果を踏まえて来年以降の開催も検討したい」と話す。