福井市内の底喰(そこばみ)川に架かる「ふくろう橋」が4月5日、開通した。
同橋は、同市文京3丁目に架かる歩行者・自転車専用の「人道橋」で、長さ約20メートル、幅約2メートル。底喰川の河川改修工事に伴い、それまでの鉄製の橋を福井県が架け替えた。地元のまちづくりグループ「田原町デザイン会議」代表の森川けい子さんによると、「以前の橋は昭和時代に架けられた。地元の田原町商店街の意向で造られたと推測するが詳細は不明」という。
同日10時から同グループ主催で開通式を開き、周辺住民など約200人が橋の完成を祝った。春山公民館(文京3)の柳沢全之館長、福井大(文京3)工学部の野嶋慎二教授など来賓のテープカットを合図に渡り初めとなり、老若男女が開通の喜びを分かち合った。
同橋の建設に当たり、デザイン策定やネーミングなどで同グループが深く関わったという。同グループは2005年、「『ここに住んで良かった』と実感できる田原町のまちづくりを」と地域住民有志で設立。商店街と共に育ったという森川さんは「河川改修計画を受け、新しい川のほとりで地域住民がのんびり過ごす将来像を描いたのが参加のきっかけ」と話す。
地域住民や同大の学生などでつくる同グループは、川に関する学習会、川底清掃、ボートでの川下りなど「川と親しみ、川を知る」ためのイベントを次々と仕掛けた。国内外の先行事例も調査し、2012年には「新しい人道橋の掛け替えデザインに関する提言」を同県に提出した。
提言書はA4判約60ページで、周辺住民へのアンケート結果やデザイン案などを盛り込んだ。「たたくとドレミの音が出る手すり」「川にLED入りボールを浮かべたライトアップ」など住民のアイデアも載せ、「地域居住者や他地域からの来訪者が長年にわたり気持ちよく利用できる橋になるように願う」と結んだ。
同グループは橋の名前にも地元の意向を反映させた。「近くに生息するハグロトンボにちなむ『とんぼ橋』と、知恵の神様のシンボルである『ふくろう橋』が最終候補に残った」。橋の周辺は小中高校、大学、図書館、美術館などが集中するエリアで、森川さんは「文教地区にふさわしい名前になった」と笑顔を見せる。
地域住民の要望が橋の建設に生かされたのは、同市内では2例目という。「底喰川は一級河川で川や橋などの管理者が違い、当初は手続きの複雑さに悩まされた。要望書も手探りの作成でずいぶん苦労した。自分たちの経験がほかのまちづくりの参考となればうれしい」
河川改修はこの春で一区切りつき、同グループも設立10年の節目を迎える。「多くの人々の支えで活動を続けられたことに感謝したい。橋の完成は一つの通過点で、当初描いた将来像を実現するのはこれから。記念樹植樹や管理道路脇の花壇作りなどプランは尽きない」と夢を膨らませる。