美術家・ディレクター・職人ら46組による展覧会「北陸工芸の祭典『GO FOR KOGEI 2021』」が9月10日、福井など北陸3県で始まった。
岡太神社・大瀧神社の境内にある、現代陶芸家・桑田卓郎さんの作品
福井県鯖江市を中心に行われる「RENEW」、越前市で行われる「千年未来工藝(こうげい)祭」など、北陸3県の工芸祭関係者7団体で組織する北陸工芸プラットフォーム実行委員会が企画。「工芸の時代、新しい日常」をテーマに掲げ、「現代アート化する工芸」「デザイン化する工芸」の2本柱で展開する。
福井からは、越前和紙職人で人間国宝の9代目岩野市兵衛さん、和紙原料のコウゾを用いた作品を長く手掛ける美術作家・八田豊さん、越前和紙職人の瀧英晃さん、長田泉さんの計4人が参加する。
岩野さんがすいた生漉(きすき)奉書紙は福井会場の岡太(おかもと)神社・大瀧神社(越前市)の石灯籠の窓に、八田さんの作品は勝興寺(富山県高岡市)にそれぞれ展示する。瀧さんと西陣織の老舗「細尾」(京都市中京区)による和紙製の壁紙と、長田さんが「森岡書店」(東京都中央区)店主の森岡督行さんと共に作った和紙製の服は、ギャラリー「SKLo」(金沢市)で展示する。
同神社で行われた記者会見で、東京芸術大名誉教授なども務める同展キュレーターの秋元雄史さんは「今や工芸を『工芸の理屈』で捉え切れない時代。刻々と変化する現代アート事情、工芸を取り巻く状況をリアルに伝えたい」とあいさつ。屋外展示の狙いについても触れ、「時間帯や天候によって見え方も変わる。各会場が離れて存在しているので、移動中の時間や空間の移り変わりも含めて作品として鑑賞してもらえれば」と呼び掛けた。
記者会見には、岩野さんと、同神社観音堂でインスタレーション「渾々(こんこん)と」などを展示する現代陶芸家・牟田陽日さん(石川県在住)も参列した。
岩野さんは、原料に交ざる「ちり」を手で一つ一つ取る工程に触れ、「われながら『今どきこんなことようやるわ』と思う」と場を和ませながら「いい紙ができると紙がにっこりほほえむ」と話し、牟田さんは「観音堂を初めて訪れたとき、本堂や奥の院のような厳かな印象とは異なる身近で温かなありがたさを感じた。作品を考えるに当たり、表現に現れる作家のエゴを観音堂という場と対話させながらプランを練っていった」と振り返る。
入場料は、同神社など計5会場の共通パスポート3,000円ほか。チケットは、公式ホームページと各会場で販売する。会期は10月24日まで。