福井の乗馬クラブ「ほんごう馬の里」が10年 廃校跡活用し開設、研修生制度も

馬にまたがる野尻さん。「『競走馬のその後』を訪ねてくださる競馬ファンの方も」と話す

馬にまたがる野尻さん。「『競走馬のその後』を訪ねてくださる競馬ファンの方も」と話す

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 福井市の乗馬クラブ「ほんごう馬の里」(福井市西荒井町、TEL 0776-83-0405)がオープンして10年がたった。

同施設建設前の上郷小跡の様子。校庭や体育館があった場所が現在、馬場となっている

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 2007年4月、同地区の廃校跡に会員制乗馬クラブとしてオープンした同施設。現在、会員数は約60人で7割が40歳以上。同市内はもとより、敦賀市や滋賀県などから週2回のペースでレッスンに訪れるという会員もいる。

 チーフインストラクターの田島昭明(よしあき)代表は鯖江市出身で、福井工業大附属福井高(学園3)馬術部を経て、地方競馬全国協会(東京都港区)の教官や福井県立馬術競技場(海老助町)の職員などを務めた。その後「馬と人が健康でハッピーに寄り添える環境をつくり、馬に恩返しを」と起業を模索する中で、2005年3月に廃校となった福井市上郷小跡地の存在を知ったという。

 レッスンは1日6回で、1回当たり30~40分。コースは、5人まで有効のファミリー会員(入会金=6万4,800円、年会費=6万4,800円、レッスン費=3,600円)、平日会員(同=3万2,400円、同=3万2,400円、同=3,600円)、「マイペース派におすすめ」という個人B会員(同=5万4,000円、同=5万4,000円、同=3,600円)など。

 乗馬歴20年以上という事務局スタッフの野尻幸代さんは「馬に乗る人の中には競技会や国体などの上位入賞を目指す『ガチ勢』も少なくないが、当クラブは『馬に癒やされたい』というきっかけで入会された方がほとんど。年齢層も小学生から70歳代までと幅広い。馬は乗りたい気持ちさえあれば誰でも乗れるという存在で、クルマや自転車のような乗り物と捉えてもらえれば」と話す。

 現在、馬主からの預託馬も含め15頭を所有する。うち13頭は競走馬として活躍したサラブレッド種で、中には引退のニュースが大きく報じられた名馬もいる。野尻さんは「速く走ることだけを教えられた競走馬を乗馬向けに調教するには苦労が伴うが、いったん引き取った馬はあらゆる手を尽くして必ず乗馬向けに育てるというのが当施設のポリシー」と力を込める。

 背景には同種をめぐる国内事情がある。国内で生まれる同種は年間約7000頭で「競走馬としてデビューできるのはほんの一握り」という。「天寿を全うできるサラブレッドは極めて少ないのが現状。施設に集まる馬には周囲の人たちの『助けたい』という思いが込められており、その重みを感じたら簡単に調教を諦めるわけにはいかない」。入会問い合わせの電話にも「サラブレッドの幸せな余生の一助となれば」という声があるという。

 野尻さんは「一般的な馬術のイメージは軍隊の騎兵隊に端を発するのでは」とも説明する。「馬に乗ることを訓練や練習などとして捉えない『エンジョイ・ライディング』という見方が、この20年ほどで全国的にようやく広まってきた。特に地方においての認知度はまだまだで、市場を開拓できる余地はある」

 全国的な「馬人(うまびと)」不足の解消に貢献できればと、4年ほど前から、馬に関わる仕事を希望する人に向けた研修生制度も本格化した。「ホームページやフェイスブックで告知している程度」というが、これまでに岐阜、宮城、オーストラリアなどからも研修生を受け入れた。研修期間は3カ月・半年・1年の3コースを目安とし、本人の適性に合わせて対応するという。

 長年にわたる馬との関わりを通して「『継続は力なり』ということわざを身をもって体感した」と野尻さん。「馬の知能は人間の2~3歳児ほどとされ、調教に当たっては気長に付き合う心構えが求められる。体重も500キロほどに成長するが、世話の手を抜くと簡単に死んでしまうような弱い面も持ち合わせており、命のはかなさやありがたさも教えられた」と振り返る。

 営業時間は9時~18時。火曜定休。

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