福井市の浄土真宗本願寺派照恩寺(福井市東郷二ケ町)で5月3日、「テクノ法要 正信偈 行譜(しょうしんげ ぎょうふ)」が行われた。
法要後、ノートパソコン片手にニコ生視聴者からの質問に応える朝倉さん
同寺17代住職の朝倉行宣さんが、仏教の開祖とされる釈迦(しゃか)の生誕を祝う「極楽音楽花まつり」の一環として企画した。20代のころ舞台照明やDJの仕事をしていたという経歴を生かし、従来の法要にテクノ音楽や照明効果などを組み合わせた演出を考えた。
テクノ法要は3回目で、今回は動画サービス「niconico」とのコラボレーションによる「ニコニコ生放送(以下、ニコ生)」も行った。朝倉さんによると「niconicoさんからお声掛けを頂いたのは2月初めごろ」で、昨年10月のテクノ法要がテレビ番組や国内外のネットニュースなどで紹介されたのがきっかけだったという。
法要には周辺住民や市内外の音楽好きなど約150人が詰め掛け、ニコ生でも約1万9000人が視聴した。14時過ぎ、「先請伽陀(ぜんしょうかだ)」をバックに朝倉さんらが現れると、ニコ生の画面上には「かっこいい」「Perfume的な法要だ」「トラックがめっちゃ良い」などのコメントがあふれた。
親鸞(しんらん)聖人の教えを説く「正信偈」では、御堂内のプロジェクションマッピングも盛り込んだ。ニコ生では「これは踊れる」「鳥肌が立ちそう」「おばあちゃんに聞かせたい」「ブルーレイソフト化はまだか」などの書き込みが相次ぎ、後半には「南無阿弥陀仏」の念仏が画面中に広がる「弾幕状態」となる場面もあった。
法要後、朝倉さんは「ご本尊を安置する『内陣』を照らすのは仏教本来の在り方で、電気の光で浄土の世界を表現してみたいと考えた。光源としてろうそくを使うのは今でも一般的だが、その常識を一度取り払ってみるのも私にとって挑戦だった」と企画意図を解説した。
来場者や視聴者を交えた質問時間もあり、準備期間について「正月ごろからイメージをふくらませて少しずつ作業を進めた。好きとはいえ素人の仕事で、今朝まで作り込みを続けた」と回答。照明機器のデジタル化についても触れ「プロジェクターを2台用いたプロジェクションマッピングは初挑戦で機材選びから難航した。想像していた物と違い返品したこともあった」などと明かした。
会場には本願寺(京都市下京区)職員の姿もあり、朝倉さんは「本願寺から怒られるのではと思いながら始めたテクノ法要だったが、視察に来ていただきお墨付きを得ることができた。これからは怖がらずに発信できそう」と笑いを誘った。
今回の法要に先立ち、朝倉さんはクラウドファンディングサイトを通じて約40万円の支援を受けた。「集まったお金を、プロジェクター、マッピング用のソフト、照明機材などの購入に充てることができた。自身のハードルを上げるようだが、おかげさまで『過去のテクノ法要の中で一番良かった』という声も頂けた」と手応えを話す。
法要の様子は現在、ニコ生サイトで公開している。視聴には会員登録(無料)が必要。