福井県あわら市の「金津創作の森美術館」(宮谷)で7月2日、企画展「造形作家 玉田多紀展 呼吸するダンボール」が始まった。
首長竜をモチーフにした「Independence」は、高さ2.8メートル、幅1.6メートル、奥行き5メートルの大型作品
埼玉県越谷市在住の玉田多紀さんが手がける、古紙段ボールを用いた立体作品の展覧会。展示室「アートコア ミュージアム-1」、ギャラリー、ホワイエの各施設と屋外に計約80点を展示する。もともと2年前に開かれる予定だったがコロナ禍の影響で延期となり、企画立案から足かけ5年で開催にこぎ着けた。
玉田さんは1983(昭和58)年兵庫県生まれ。多摩美術大学で油絵を専攻していた時に古紙段ボールによる美術表現に出合い、生き物の造形美や性質などをモチーフにした創作を行うようになった。ウインドーディスプレー、国内外の展覧会、ユーチューブチャンネルでの動画配信など活動領域は幅広い。
展示室は、コロナ下の世情を象徴する「アマビエ部屋」から、「おしり部屋」「恐竜部屋」「たまご部屋」「レッドリスト部屋」「カエル部屋」「さかな部屋」へとゾーン分けして展開し、明るい陸上から徐々に水中に潜るような照明で演出する。たまご部屋の展示作品「作家のたまご」の制作に当たっては、展示する地域と作品がなじむようにと、金津中(市姫1)の生徒に段ボールチップ作製を依頼し協力を得た。
ギャラリーでは、アトリエを再現したコーナー、作品を抱いて撮影できる「SNS映え」スポット、来年3月に神奈川県大和市で予定する次の展覧会に向けメッセージを託す参加型作品「Messenger」などを設ける。作品は全て撮影可能で、同館ではハッシュタグ「#金津創作の森美術館」「#玉田多紀展」「#呼吸するダンボール」を付けたSNS投稿を呼びかける。
玉田さんは「抑圧された時にのみ発動されるフラストレーションや、日常生活の中であふれかえる情報に対する違和感や怒りなどが創作の原動力」と話す。段ボールの加工法は、剥ぎ取ったり、裂いたり、水に浸し「三枚おろし」にして着色したりとバラエティー豊か。将来的に土に返ることを見据えた「作品の終活」も意識し、骨組みも段ボール製にこだわるという。
日本中の子どもたちが段ボール造形を一度は経験することを目標に、ワークショップなど教育普及活動にも力を入れる玉田さん。「企業秘密にするような制作の裏側を無料で動画配信するのも、古紙段ボールという身近な素材で造形の機会に触れてほしいから。図工の教科書に採用されるくらいに段ボール造形の知名度が上がれば」と笑顔を見せる。
関連イベントとして、8月20日14時から、玉田さんによる作品解説「ミュージアムクルーズ」を行う。参加には展覧会鑑賞券が必要。期間中の土曜・日曜・祝日と、8月12日~16日には、小学生以下の来場者を対象に段ボール製パンダ型ペン立てキットを進呈する(各日先着20人)。
開館時間は10時~17時。入場料は、一般=800円、中高生=600円、小学生=400円。月曜休館(祝日の場合は翌日、8月15日は開館)。8月28日まで。