福井県嶺南(れいなん)地方在住の有志が現在、「若杯者(じゃくはいもの)プロジェクト」を行っている。
来年成人式を迎える若者が中心となり「自らの手で作った日本酒で新成人を祝う」という同プロジェクトは、今年で3期目。発起人の一人で、明通寺(小浜市門前)寺務員の中嶌阿児(なかじまあこ)さんは「以前より、耕作放棄地や地場産業振興など地域が抱える課題と若者世代との関わりを模索していた。考えをめぐらすうち若者たちを応援する環境が整っていないことに気付き、地域づくりに意欲的な人たちに呼び掛けた」と振り返る。
おぼろげな思いに具体性が伴ったきっかけは、知人から聞いた大阪の酒販店の取り組みだった。「酒販店が始めたという『19歳の酒』という企画がヒントになった。日本酒は物としても文化としても興味深いコンテンツで『和を醸す』という象徴性もある。プロジェクトを始めたことで、酒造りの面白さにどんどん引き込まれていった」と力を込める。
日本酒造りには「山田錦」などの酒造好適米(酒米)を使うことが多いが、同プロジェクトでは食用米のコシヒカリを使う。今期は、5月の田植えから9月の刈り入れまで育てたコメから、20キロをこうじ米に、80キロをもろみに直接入れる「掛米(かけまい)」に当てた。酒米と食用米との特性の違いを踏まえ、精米歩合(=米を磨く割合)は90パーセント程度にとどめたという。
12月4日には、来年成人式を迎える3人を含めた11人が鳥浜酒造(若狭町鳥浜)に集まり仕込み作業に汗を流した。洗米、洗米後の浸水、仕込みなど日本酒造りでは水が重要なキーワードで、同社の小堀安彦社長が「これまでの実績を踏まえて浸水時間を延ばしてみては」と助言する場面も見られた。
参加者は「田植えや草むしりを体験し、何気なく飲んでいる日本酒に潜む苦労が分かった」(木下起希さん)、「普段味わえないことを体験できた」(岸上達哉さん)、「自分の育てたコメが日本酒として仕込まれ、子どもができるような気持ち。この子たちを置いておちおち帰省もできない」(中野光さん)と興奮した様子だった。
今後の工程は、「しぼり」=12月19日・21日・23日、「瓶詰め・火入れ」=23日を予定する。中嶌さんは「来年成人式を迎える若者に限らず、『気持ちはまだまだ若者』という方や日本酒文化に興味のある方にも参加いただければ」と呼び掛ける。
参加費500円。問い合わせ・申し込みは中嶌さん(TEL 090-5415-7890)まで。