福井市にある「SuperKaBoS(スーパーカボス)新二の宮店」(福井市二の宮5、TEL 0776-27-4678)で6月21日、書籍フェア「勝木書店×HNB!『わたしのおススメ→だれかのキッカケ』」が始まった。
6月21日に行ったPOP制作ワークショップ。参加者は真剣な面持ちで制作に取り組んでいた
福井県内を中心に活動する読書愛好者グループ「Have a nice book!」が、勝木書店(中央1)グループの同店と企画した。「Have a nice book!」代表で、8年前に勝木書店グループの書店員を務めた佐藤実紀代さんが「仕事としては書店を離れてしまったが、私自身が本をお薦めするPOPを書きたいと思った」と元上司に話を持ち掛けた。
「今年に入って企画を思い付き、元上司の部長に8年ぶりに会って直談判した」という佐藤さんと、地域コミュニティーとの交流の場を求める同社の意向が合致し同フェアが実現。企画のモデル店となるようにと、同社が基幹店と位置付ける同店を会場に選んだという。
フェアに先立ちPOP制作のワークショップを行い、佐藤さんの呼び掛けに応じた15人が同店に訪れた。参加者は、事前に各自で選んだ「笑える本」「泣ける本」のお薦めメッセージをペン書きし、好きなサイズや形に切り取った。イラストを中心としたものや文字ばかりのものなど、バラエティー豊かなPOPが出来上がった。
参加者には福井市在住の作家・宮下奈都さんも。宮下さんは「私の作品は小説というイメージが強いと思うが、エッセーも書いていることをアピールするチャンスと思って参加した。普段全く本を読まない方にも笑ってもらえる自信があるので、ぜひ読んでほしい」と、1月発売のエッセー集「神さまたちの遊ぶ庭」を「笑える本」に挙げた。同書は1年にわたる北海道での田舎暮らしをつづった作品で、POPには「これを読んだら宮下奈都に対する印象が変わると思うの。ぜったい笑える!!(著者保証)」と記した。
佐藤さんと同店の清水俊浩店長や店員が、参加者が選んだ書籍25点とPOPを併せて展示台に並べた。「楽園のカンヴァス」(原田マハ著)を薦めるPOPを書いた黒川貴英(きえ)さんは「せっかく書いたのに売れなかったらどうしよう。気になって毎日来てしまうかも」と笑顔を見せる。
展示台にはベストセラーからこぼれた版数の少ない本も並び、佐藤さんは「店内でひときわ目を引くコーナーになった」と自信をのぞかせる。店員の一人も「これまで店員がPOPを作っていたが、読者の手で書かれた本への思いがうれしい。私自身、読んでみたいという気持ちが抑えられない」と話す。
展示台は季節に応じたフェアを行うコーナーにあり、「今までになかった企画で大歓迎」と清水店長。展示コーナー開設から約1週間で約20冊が売れ、再入荷した本もあるという。店員も「売り上げのペースとしては異例。皆さんのPOPのおかげ」と喜ぶ。
デザイナーとして活動する佐藤さんは「インターネットで本を買ったり画面上で文章を見たりという時代になったが、生の本に触って買える魅力を知るきっかけになれば」と期待を込め、「1回目ということで近しい人々に呼び掛けたが、今後改善点を考えながら広く参加してもらえる企画を行いたい。元書店員として書店と読者との橋渡し役になれたら」と話す。心地よい空間づくりと本をミックスした企画も構想中といい、「病院や福祉施設など、普段本を手に取っていない人たちが本を楽しめる空間も提供したい」と意気込む。
開店時間は9時30分~23時。入場無料。7月31日まで。