提供:Rethink Creator PROJECT 制作:福井経済新聞編集部
地域の魅力を発見し、発信する人財を日本中に生み出していく「Rethink Creator PROJECT」の福井セミナーが9月5日、福井駅西のコワーキングスペース「XSTAND」を拠点に行われました。
『Rethink Creator PROJECT』とは、クリエイターズマッチが提供するカリキュラムを通じ、“視点を変えて考え(Rethink) - 考えを形にし(Creative)- 伝えることができる人財(Rethink Creator)を生み出していく”プロジェクト。「クリエイターズマッチ」と「Rethink PROJECT」(JTの地域社会への貢献活動の総称)、そしてJTBとのコラボレーションで全国展開しています。
福井セミナーの開催は今回が初めてで、開催に当たっては福井市が共催。当日は福井県独自の緊急自体宣言下でもあり、同スペースからのライブ配信を受講者34人がオンラインで視聴する形式で進められました。
「地域の題材を取り入れたワークショップ」を特徴の一つとして掲げる同セミナー。東京都在住のディレクター・デザイナーで、2018(平成30)年のRethink Creator PROJECT発足時から全国の会場を回る下田裕美さんと、福井で活動するエディター・ライターの畠山かなこさんが講師を務め、ビデオ会議システム「Zoom」を介してプログラムを進めました。
プログラムは、「Rethink講座」(30分)と、講座での学びを実践する「Createワークショップ」(90分)の二本柱で構成。下田さんや畠山さんの呼び掛けに受講者がチャットで応え、それぞれの視点やアイデアを共有しながら展開していきます。
Rethink講座では下田さんが冒頭、Rethinkの意味を「視点を変えて物事を考えること」と説明した上で、「フィルター」「インサイト」「カプタ」という3つの観点を示し具体例を交えながら深掘りしていきました。
フィルターとは、地元の魅力を「『誰』に『何』を届けるか」という視点で切り取る考え方のこと。「福井の魅力を伝えて」とオーダーされても伝える物事を絞り込むのは難しいものですが、「誰」「何」を特定することにより伝えたい物事が明確になります。
ここでは、下田さんが「仕事でお世話になった食いしん坊の先輩」というフィルターを例示し、畠山さんが「ガッツリと食べられる『ソースカツ丼』を福井の魅力として伝えては」と応じました。
続いて下田さんが解説したのは「インサイト」。はじめに設定したフィルターを踏まえ、伝えたい相手の内面に寄り添って、伝えたいメッセージの手がかりを深掘りしていく視点です。
「食いしん坊の先輩」というフィルターに対して「ソースカツ丼」を選択したのには何か理由があるはずです。インサイトはその理由を自問自答するプロセスともいえます。下田さんと畠山さんは互いのやりとりを通じて、「慌ただしいランチタイムでも、食いしん坊の先輩なら手早く食べられそうだから」というインサイトを明らかにしていきました。
ところで、私たちが認識している「情報」には、正確で固い「データ」と、自由で柔らかい「カプタ」の2種類があります。その違いを把握してもらおうと、下田さんはソースカツ丼の写真を使った2つのポスターを示しました。
下田さんは、考案者や価格などのデータ情報でまとめられたポスターと、オノマトペや福井弁などのカプタで仕上げられたポスターとでは受ける印象が異なることを解説。カプタ情報を基にキャッチコピーを考えると、その魅力をより伝えやすくなると説明しました。
後半は、受講者がチャットで参加する形式で進行するCreateワークショップ。Rethink講座で学んだ「フィルター」「インサイト」「カプタ」の視点を踏まえ、福井にまつわる2つの物事の魅力を発信していくプロセスの実践です。テーマは「アフターコロナの福井をRethink」。
用意された写真は、「越前おろしそば」と、越前海岸(福井市)にある「鉾島(ほこじま)」の2点。越前おろしそばは、400年以上前に生まれたと伝えられる地元グルメ、鉾島は約1500万年前にできたとされる高さ約50メートルの柱状の岩場で、夕日や星空のロケーションスポットとしても注目を浴びています。
ともに、ターゲット設定、カプタ情報の共有、インサイトを意識したキャッチコピー作成という手順で進みました。越前おろしそばのターゲット設定では、「コロナで結婚式が挙げられなかった30代新婚夫婦」「そば好きの20代独身男性」「都会で暮らす都会生まれの大学時代の同級生」などの意見がチャットで寄せられ、「うどん県(=香川県)の人や、だしが命の大阪の人」に決定。
カプタ情報の共有でも、「わさびが生きる味わい」「大根おろしは辛みのキング」など独特の辛みを想起させるカプタや、お盆に親戚が集まった時にワイワイと食べるシーンを想起させるカプタなどバリエーション豊かなアイデアがチャットに。これらを基に受講者がキャッチコピーのアイデアをふくらませ、畠山さんが「一つに決めがたい」と言いながら、辛みを一言で表現した「ツーン!」というキャッチコピーを採用しました。
まとまったコピーを基にポスターに仕上げるのは下田さんの担当です。受講者の投票で書体や書字方向を決めた後、「鼻に抜ける大根の辛みを斜めに走らせた『ツーン!』の文字で表現します」などと解説を加えながらグラフィックソフトを操り、1枚のポスターに仕上がる様子を会場とオンラインで共有しながら見守りました。
鉾島の写真を使ったワークショップでも同様のプロセスで制作を進め、90分弱で地元の魅力を発信する2つのポスターが完成しました。
セミナーを終えて、クリエイターズマッチの竹内美代さんは「オンラインのみの開催とはなりましたが、参加者皆様のアイデアはどれも素敵なものばかりで、チャットのコミュニケーションでも地元愛を強く感じることができました。今回のセミナーをきっかけに、地元の人が地元の魅力を発見・発信を続けていただくことで、地域の活性化に繋がれば嬉しいです」と振り返りました。
クリエイターズマッチの竹内美代さん
福井への訪問は初めてだったという下田さん。2時間半のセミナーを終え、「シンプルな味わいのおろしそばに親しんでいたり、水ようかんを食べる季節が冬だったりと、土地の風習や暮らし方に興味が湧きました。福井駅周辺を歩いてみて、古めかしいものと新しいものが共存している姿にも引かれましたね。北陸新幹線福井・敦賀開業が控える中で、福井の人たちの暮らしがどう変わるかが興味深いです」と話しました。
講師を務めた下田さん
本プロジェクトに関わっている企業のみなさんからは「新たな発見があった」などの声が寄せられました。
「福井の新たな魅力を知るいい機会となりました。本日の気づきを我々の地域社会への貢献活動にも生かしていきたいです」(JT福井支店長 山口清則さん)、「日々の生活の中で見過ごしてしまうような魅力発見のきっかけをもらえました」(同福井支店 江戸秀介さん)、「福井の人たちは控えめで奥ゆかしい印象で、今回のセミナーが地元の魅力発信の一助となればうれしいです」(同北陸支社 高岡裕子さん)
左から、江戸さん、山口さん、高岡さん
「今回のセミナーでの学びを生かし、福井の人たちが地元の魅力を全国にどんどん発信していけることに期待しています」(JTBふるさと開発事業部 松本太郎さん)、「地元の魅力を知る大切さ、そしてそれを発信する大切さを学べたひとときでした」(同 辻拓真さん)
左から、辻さん、松本さん
参加者アンケートでは、「いろんな観点から写真を見ることができて面白かった」「あっという間の時間で、とても楽しく勉強になりました」「オンラインでアイデアを持ち寄って完成させていく工程が面白かった」という声があったほか、「インスタなど県内外のフォロワーさんに私の大好きな福井県を素敵に伝えられたら」「自社の商品をアピールするのにも役立てられそう」など、セミナーでの学びをさっそく生かしたいというコメントも寄せられました。
「Rethink Creator PROJECT」ではセミナーでの学びを次のアクションにつなげてもらう、挑戦の場として「Rethink Creative Contest 2021」を行っています。写真とキャッチコピーで地域の魅力を伝えるオリジナルポスターのコンテストで、広く応募を受け付けています。
デザイン経験がなくてもチャレンジできる、アイデア重視のコンテストです。プロが使うグラフィックソフトでなく、ワード、エクセルなどのソフトで作った作品でもかまいません。ふるってご参加ください。