福井の漫画家が描く「ザ・ゴール コミック版」、10万部を突破

「ノリ良く読んだ後、自分と関わりのありそうな箇所を仕事や暮らしに落とし込んでもらえたら」と宮前さん

「ノリ良く読んだ後、自分と関わりのありそうな箇所を仕事や暮らしに落とし込んでもらえたら」と宮前さん

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 福井県鯖江市在住の宮前聡子さんが描いた「ザ・ゴール コミック版」(ダイヤモンド社)の発行部数が10万部を突破した。

 イスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラットさんのビジネス書「ザ・ゴール-企業の究極の目的とは何か」を、日本のメーカーを舞台としたストーリーで再構成した。同書は全世界で1000万人が読んだとされるベストセラーで、2001年に日本語版が出版された。同書にある「制約理論」が日本で広まると貿易不均衡が起こるとの懸念から、日本語版発刊が17年間禁じられていたという。

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 宮前さんは「蒼田山(あおたやま)」のペンネームで創作活動を行う漫画家。東京学芸大在学中に講談社「週刊少年マガジン」編集者の目に留まり、同誌主催の新人漫画賞入賞を機に漫画家としてスタートした。20代のころは漫画家のアシスタントを務める傍ら、自作のアイデアをためて新作を発表する生活を送っていたという。

 28歳の時、ビジネスコミックの記事を経済紙で見掛けたことが転機となった。「記事にあった編集プロダクションをネット検索すると、描き手を登録できるデータバンク的なものがあった。試しにエントリーしたところ、すぐに『一緒にやりませんか』と誘いを受けた」。その後、「決算書速習教室」などのビジネスコミックを手掛けキャリアを積んだ。

 宮前さんに執筆の呼び掛けがあったのは昨年1月。手掛けた作品をコンペに提出したところ実績が買われ、採用が決まった。制作では、監修の岸良裕司さんや脚色の青木健生さんなどブレーンも加わった。宮前さんは「日本語版は約550ページあり、緻密な論理構成を圧縮する作業はとても一人ではできなかった」と振り返る。

 コマ割りやせりふなどを示す「ネーム」制作に約4カ月、作画に約3カ月を費やした。「原書発刊30周年記念の企画で、コミック版発刊日が当初から決まっていた。想像以上にネームに時間がかかりつらい時期もあったが、『ゴールドラット博士のまな弟子』と呼ばれる岸良さんと未経験の仕事に取り組むわくわく感の方が大きかった」

 作品では、主人公たちが工場の生産能力を決める「ボトルネック」を解消する過程を描く。架空のメーカーを舞台にしたが、どの製造現場にも応用できるよう業界を特定する描写を避けた。「工場内のシーンをあえて細かく描き込まなかったところ、『なぜ、全ページこんなに白っぽいの?』との感想もあった」。宮前さんはもともとそれが狙いだったとし、感想を読んで「それ、当たり!と膝をたたいた」という。

 漫画家、専門学校講師、子育て主婦と「3足のわらじ」を履く宮前さんは、同書執筆を通して「制約理論」が暮らしに応用できると気付いたとも。「子育て主婦は『何でも自分でやらなくては』との考えにとらわれがちだが、それが家事全般のボトルネックになることもある」。他人に任せられる仕事やお金で解決できる仕事など、家事を切り分ければ全体の生産性が上がるのではないかと指摘する。

 ビジネスコミックを描く上で、「『気が付いたらいつの間にか読み切っていた』というノリの良い流れ作りを重視する」と宮前さん。「複雑に見えていたものがシンプルに見えるようになる可能性を秘めた本。書店のビジネス書コーナーにある本だが、メーカー勤めでない方も気軽に手に取ってもらえれば」と呼び掛ける。

 価格は1,296円。