福井県大野市の洋菓子店「パティスリー ミラベル」(大野市本町、TEL 0779-66-2405)が10月30日、オープン1周年を迎えた。
店舗面積は約8坪。ショーケースには「季節のフルーツショートケーキ」(390円)、「モンブラン」(470円)、「バナナとチョコのムース マンゴーアクセント」(450円)などのケーキや、「フロランタン」(140円)、「ガトーバスク」(450円)、福井産小麦「ふくこむぎ」を使った「塩バタースコーン」(150円)など焼き菓子類が並ぶ。
店主の山内李佳(りか)さんは同市内の高校を卒業後、「子どものころから大好きだった」という菓子作りを学ぶため大阪の製菓専門学校に入学。卒業後は約9年半、大阪の洋菓子店やレストランなどでパティシエとして腕を磨いた。「いつか地元に戻ることができればと漠然と考えてはいた。仕事を始めて9年目に職場が変わったのが『自分の作りたいケーキを作ろう』とUターンするきっかけになった」と話す。
店名の「ミラベル」はフランス語でスモモを意味し、自身の名前の「李」から取ったという。「大阪で暮らすうち『この場所で一生を過ごすのは難しいかも』と感じるようになった。大野が好きだったし、何より家族のことが大切で家族のそばで暮らしたいと思った。自分の店をオープンする場所として、大野を選ぶことに迷いはなかった」と振り返る。
当初は交通量の多い大通り沿いに店を構えることを考えたが、親戚に元米穀店の物件を紹介され「城下町らしい落ち着いた風情と古民家の雰囲気が気に入り」店のイメージが一気に膨らんだ。
「当初は大工さんに自分のイメージを伝えながら改装を進めたが、どうしても具体的に伝えられず困っていた。地元の友人や知人の力を借り、設計図まで用意してもらい何とか形にすることができた」。特にレジを置くステンレス製什器(じゅうき)は「知人の協力のたまもの」で、大野の良さを再認識する出来事になったという。
「姉、弟、両親、祖父などが一生懸命クチコミで宣伝してくれたおかげ」でオープン初日から売り切れになる日が続いた。「実は、自分のペースでのんびり思いきり手間暇かけ、ゴージャスでスタイリッシュなケーキ作りをしていこうかと考えていた。みんなの気持ちはうれしかったが戸惑いもあった」。それでも来店客をがっかりさせたくはないと、デコレーションの手法を変えるなど数量確保に努め周囲の期待に応えた。
店主でパティシエという立場から「決して『手を抜く』という意味ではないが、一定数量を作ろうとすると現実と理想との両立は難しいと落ち込む時もあった」というが、8月の盆休みに気持ちを吹っ切った。「ぜいたくな悩みはいったん置き、今は支えてくれるお客さま全てに私のケーキを食べてもらおうと気持ちを切り替えた。思い通りのケーキを作るのはもっと先でも構わないと考えた」
一つ一つの菓子を「かわいい子」という思いで作るという山内さん。「将来的には予約分だけを用意したり、アシェットデセール(皿盛りデザート)のように旬の素材を使った作りたてをその場で召し上がっていただいたりという形態に変わるかも。だが、今は『かわいい子』たちで大野の皆さんに恩返しすることに専念したい」と笑顔を見せる。
営業時間は10時~19時。月曜・第3日曜定休。