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福井・永平寺に「越前茶房 和樂」 江戸~昭和期の日本美術呼び物に

外に掛かるのれんは、同町在住の染織家・石川雅夫さんが手掛けた

外に掛かるのれんは、同町在住の染織家・石川雅夫さんが手掛けた

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 福井県永平寺町に9月11日、「越前茶房 和樂(わらく)」(永平寺町松岡神明、TEL 0776-61-0175)がオープンした。

庭に接するぬれ縁は1729年、松岡藩邸取り壊しの際に廃材の一部払い下げを受け移築したという

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 店舗面積は約10坪。かつて織物工場として使われた、明治時代建造の町屋の一部を活用した。店主の島田正章さんによると「建物はもともと通りを挟んだ向かい側にあり、曳家(ひきや)で180度回転させて今の位置に移築した」経緯があり、店舗奥の庭やぬれ縁などは江戸時代に造られたという。

 店内には江戸~昭和期に描かれた美術品を配置し、六曲一双の「柵と遊象図金屏風(きんびょうぶ)」を呼び物にする。「角度によって象の表情が変わる立体的な絵画。坂井市丸岡町内の親戚宅に眠っていた作品で丸岡藩主の有馬家に関係すると思われるが、丸岡藩とつながりのある越後高田藩・榊原家が作らせた可能性も。榊原家11代当主・政令(まさのり)の母が『象(きさ)の方』と呼ばれていたことも理由の一つ」と島田さん。

 開業に当たっては、地元有志ら約40人でつくるボランティアグループ「喜佐の会」がサポートした。6月15日の第1回ミーティングの後フェイスブックで情報共有しながら、駐車場のペンキ塗り、ロゴデザイン、ホームページ作成など各自が得意のスキルを発揮した。

 呼び掛け人で古民家カフェ「cafe chotto」(永平寺町東古市)店主の酒井和美さんは「島田さんから相談があったのは1年ほど前。自分自身も『田舎の雰囲気』で癒やしを得たいタイプで、町屋活用や地元の活性化につながればとフェイスブックを通じて仲間を募った。グループ名も『象の方』にちなんで付けた」と振り返る。

 「できるかぎり照明を少なく、自然光の陰影の中で茶と絵画を楽しむ」をコンセプトに、メニューに抹茶と創作和菓子のみを用意する。島田さんは「谷崎潤一郎が『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』で書いたように、日本の美は陰影のある環境でこそ引き立つ。和室という屏風絵本来の鑑賞の場で、当時をしのびながらゆったりと時間を過ごしてもらえれば」と話す。

 営業時間は11時30分~18時(受け付けは17時まで)。入庵料は1,000円(抹茶・和菓子付き)。小学生以下は利用できない。火曜定休。

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