福井市にある和洋菓子店「丸岡家」(福井市春山2、TEL 0776-22-5394)が9月1日、新商品「はっくつバウム」を発売した。
特注の焼き印が入った「はっくつバウム」は冷やして食べるのがお勧めという
地層に見立てた直方体のバウムクーヘンに、恐竜骨格をかたどった焼き印が入った同商品。大きさは、縦=約7.5センチ、横=約22センチ、高さ=約3.5センチ。同店3代目の竹内健人さんが公的機関の補助金を活用し、同市内の編集プロダクションと共同開発した。
同商品の製法は、芯棒を回しながら焼き上げるバウムクーヘンと根本的に異なる。角形の型に1層分の生地を薄く流してオーブンで焼く作業をおよそ1時間繰り返す。オーブン内の温度が下がらないよう、生地流し込みと型出し入れの手早さが鍵となる。つきっきりでの手作業となるため、焼き上げの間は接客も家族任せだ。竹内さんは「焼いている間に下の層から水分が徐々に抜けるので火加減にも気を遣う。他の菓子作りもあり1日に5枚焼いて切り分けるのが限度」と話す。
同店も以前は円形のバウムクーヘンを作っていた。10年ほど前のある日、いつも通りにバウムクーヘンを焼いていると芯棒がポキリと折れた。大量の生地と使い物にならない機械を前に竹内さんは、同店2代目で父の延行さんと言い合いに。「とにかくオーブンに入れてみよう」と、四角形の型に生地を少しずつ流し込んで焼き上げてみた。「四角く焼いた方がしま模様に味わいがあるのでは」と顔を見合わせた。新商品誕生の瞬間だった。
「他にはない四角い形で行くなら、生地でも他店がやらないことを」と徳島県産の和三盆を使うことにした。「自分は和菓子メーンの担当なので和三盆は身近な材料だった。和三盆独特のしっとりした食感が出るようになり『和風ばーむくーへん』と名付けて売り出した」と竹内さん。同商品の生地も「和風ばーむくーへん」と同じレシピだ。
同商品の発端は、2012年に福井県内をにぎわせたニュース。仏パリのユネスコ本部での国際会議で、水月湖(福井県若狭町)の「年縞(ねんこう)」が地質学的年代決定の世界標準とされたことだった。「あるセミナーで知り合った講師に『和風ばーむくーへんは年縞にそっくり。その切り口で新商品を企画しては』とアドバイスされた」
およそ8カ月かけて開発した同商品を、8月に福井県勝山市で開かれた恐竜ライブ「DINO-A-LIVE(ダイノアライブ)勝山」で先行販売した。「100本ほど売れれば御の字」(竹内さん)との予想を大きく上回る売り上げを記録。県内外からの観光客に好評だったという。
全国各地のジオパークなど、自然環境関連施設へ同商品を拡販したいと話す竹内さん。「斜めの地層や波打った地層など、こちらが想像しなかった引き合いもある。アンモナイトや恐竜の骨をかたどった材料を一緒に焼き上げ、発掘気分を味わえる仕掛けも取り入れたい」とプランを膨らませる。
価格は1,080円。