福井県あわら市で11月上旬、「越前ガニ殻」のシーズンが始まった。
「温泉野菜ピクニック」の様子。プロジェクトは、経済産業省「リデュース・リユース・リサイクル推進協議会会長賞」などの受賞歴も
シーズンは11月6日の越前ガニ漁解禁を受けてスタート。あわら市観光協会、芦原(あわら)温泉旅館協同組合女将(おかみ)の会、同市内の生産農家などが取り組む「あわら蟹(かに)がらプロジェクト」の一環で、11月~翌年2月の越前ガニのシーズン中、芦原温泉の旅館14軒から出された「カニ殻」を同市内の農地に集めている。
同プロジェクトは2011年、同協会エコ推進委員会に所属する旅館のおかみが「毎年大量に廃棄処分するカニ殻の有効利用」を呼び掛けて始まった。生産農家が当番制で集めたカニ殻をビニールハウスで乾燥した後、チップ状に破砕し肥料として活用する。カニ殻回収は週2回で、昨シーズンは約4トンが集まったという。
取材で訪れた日は、福井発祥のミディトマト「越のルビー」などを手掛ける麻王伝兵衛さんがカニ殻の山を平らにならす作業の真っ最中。「これからシーズンが本格化し1回当たりの回収量が一気に増える。乾燥を早めるため小まめな作業が欠かせないが、カニは臭いが独特で子どもに『お父さん、カニくさーい』と言われてしまうのが悩みの種」と苦笑いする。
さらに、カニ殻成分「キチン・キトサン」などの研究に取り組む福井県立大(永平寺町)生物資源学部の木元久教授の助言を受けているという。「木元教授をプロジェクトの会合に招き、カニ殻の良さなどをレクチャーしてもらったこともある。『芦原温泉は国内有数のカニ殻集積温泉地』というお墨付きも頂いた」と麻王さん。
「カニ殻肥料」は、「越のルビー」、サツマイモ「とみつ金時」、アールスメロンなど地元産品の栽培に活用し、「かにからトマト」「かにからいも」「かにからメロン」として販路拡大を目指す。「かにから」の名称には「カニから生まれた、あわら市の新ブランド」「カニ殻を使った農作物」などの意味を込めたという。
「かにから」を軸にしたフードツーリズムの確立に向け、収穫体験や温泉旅館での朝食会などを組み合わせた「温泉野菜ピクニック」も昨年始めた。同協会の則房亜希さんは「芦原温泉への観光客数はカニシーズンに集中する傾向があり、夏場の集客増はかねての課題。『かにから』ブランドの里の幸も芦原温泉の魅力、という認知が高まれば」と期待を寄せる。