福井県坂井市に1月8日、セレクトショップ「三本日和」(坂井市三国町北本町4)がオープンした。
店舗面積は約5坪。フリーランス編集者で店主の畠山かなこさんが、ギャラリー兼オフィスだったスペースを店舗として開放した。「20代のころから『40歳までに何かの空間を構えたい』と考えていた。30代前半にいくつかのまちづくり活動に関わったことで、自分が深掘りするテーマが『暮らし』だと分かり、暮らしをテーマにした店のオープンに踏み切った」と話す。
店内には、越前漆器のぐい飲み、越前和紙のランチョンマット、福井の郷土食「打ち豆」、九谷焼の豆皿、新潟県燕市産のカトラリーなど、「編集の仕事を通じて知った」という道具や食品などが並ぶ。「ぜいたく品ではない、普段使いできる価格帯のアイテムをメーンにそろえた。10年以上前から『店を開く時が来たら、絶対これを置きたい』と決めていた商品もある」とも。
夏の時期、同市内の海沿いに吹く風向きの呼び名が店名の由来という。「一日のうちに風向きが3回変わることを『さんぼんびょーり(三本日和)』といい、語感の良さに引かれて採用した。自然と人々の暮らしとのつながりを感じさせる言葉としても気に入っている」。店のロゴも、風に吹かれた洗濯物がはためく姿をモチーフにした。
旧森田銀行本店や旧岸名家など、歴史的建造物が並ぶ「三国湊きたまえ通り」近くという地の利も畠山さんの背中を押した。「10年ほど前からまちづくりに関わっている、思い入れのある地区。食以外の土産店が少なく、自分なりの力で貢献したかった」。同店とほぼ同時期、東洋文化研究家アレックス・カーさんが手掛けるゲストハウス「詰所三國」も近くにオープンし、観光客需要も見込む。
オープンに当たり、「町家の取り壊しで道具類が捨てられる様子を目にして、まだ使える物を次世代に伝える受け皿になれば」と古物商許可も取得した。「編集者としてクライアントに物事を提案する立場だったが、開店準備を通じて発注者の視点を持つこともできた。編集業と両立できるよう当面は不定休の運営だが、1年後にはアルバイトを雇えるくらいに店を育てたい」とプランを描く。
開店時間は、フェイスブックページで告知する。