
鯖江市の金継ぎ・漆工房「うるしの駒や」(乙坂今北町)が8月下旬、新商品のコーヒーカップを発表した。
同社の商品より。(左から時計回りに)「うすくちうるし」170ミリリットル用、同コーヒーカップ(90ミリリットル用)&ソーサー、同エスプレッソ用
新商品は、同社がかねて手がける器のシリーズ「うすくちうるし」の「エスプレッソ用 50ミリリットル」。木地に国産ケヤキを使い、飲み口を約1ミリに研ぎ出して漆を塗り重ねた。酒器用途を皮切りに展開してきたシリーズを基に、エスプレッソ向けとしてサイズやフォルムなどを調整した。
サイズは、縦・横・高さ各6センチ。カップの容量は満量90ミリリットル。取っ手のないデザインで、木目を透かすように仕上げる「拭き漆」と、ケヤキや漆のタンニンと鉄くぎから抽出した鉄分を反応させる鉄媒染を繰り返して染めた「外黒染」の2種類を用意する。
店主の薮下喜行さんは「木材は陶器に比べて熱の伝わり方が緩やかという特性がある。熱いコーヒーを入れても両手でカップを持つことができると考え、取っ手を付けない仕様とした」と話す。
薮下さんによると、カフェ「ダブルトールカフェ」など展開するエスエスダブリュー(東京都)社長の齊藤正二郎さんとの出会いが開発のきっかけになったという。
「昨夏、『うすくちうるし』コーヒーカップ&ソーサーの販売を始め、首都圏での販促活動を展開する中で齊藤さんと知り合った。ダブルトールカフェはエスプレッソドリンクを売りとしていて、エスプレッソについての深い知識を持つ齊藤さんから新商品のヒントや開発に当たっての助言をもらえた」と振り返る。
9月下旬、東京ビッグサイトで行われるコーヒー業界の展示会「SCAJ2025」で販売を始め、以降、直販や卸売りなどを予定する。
薮下さんは「コーヒーカップの販売を機に業界研究を進めているが、コーヒー業界の人たちの関心は豆や焙煎(ばいせん)方法に向かっている印象を受ける。器についてはまだまだ市場開拓の余地があり、日本人の暮らしに浸透したコーヒーを日本的な器で味わうという選択肢を示せれば」とプランを描く。
価格は、拭き漆=8,250円、外黒染=9,350円。