福井の伝統工芸アイドル「さくらいと」が11月16日、メンバーの卒業を発表した。
インタビュー中の彩葉さん。ファンへの感謝の言葉をしきりに口にした
卒業するのは、「わかち」のニックネームでファンから親しまれる彩葉(いろは)わかなさん。グループのユーチューブチャンネルとXで、12月31日限りでの卒業を明かした。
彩葉さんは2019年12月、発足約半年の同グループ4人目のメンバーとして加入。彩葉さんによると、保育士を退職し、職人のように物に向き合うような仕事を探す中で、「福井の伝統工芸応援」を掲げる同グループの存在を知ったという。
しかし、加入後の活動は決して順風満帆ではなかった。翌2020年初頭から拡大した新型コロナの流行でイベント出演などが軒並み中止となり、グループはオンラインを中心とする活動を余儀なくされた。彩葉さんにとっての初ステージは、観客なしで行ったサンドーム福井での配信ライブだった。
彩葉さんは「それまで観客のいるサンドームの様子しか見たことがなく、かえって貴重な機会となった。アイドル活動を通じて経験できたことはあのライブ以外にもたくさんあり、多くの人たちに支えられてここまで歩むことができた。人は独りでは生きていけない存在であることを身をもって感じている」と感謝を口にする。
新型コロナによる行動制限の緩和を受け、グループが挑んだのはサンドーム福井での単独ライブだった。今年4月28日の本番に向け、彩葉さんらメンバー5人は、「ROAD TO DREAM ~サンドームへの道~」と銘打ったキャンペーンを展開。約1年かけて、県内各地で路上ライブやフライヤー配布などの活動に励んだ。
「キャンペーンを展開する中で、『初めてさくらいとに会った』と声をかけてくれる人が多かった。今もイベント後の特典会などでファンの人たちと話すと、あのキャンペーンがさくらいとを知るきっかけと答えてくれる人が多くてうれしくなる」と笑顔を見せる。
卒業後は伝統工芸の応援を通じて思いが募った職人の道に進み、「職人タレント」を掲げて活動を展開するという。彩葉さんは「周囲の職人の勧めもあり、和紙、打刃物、漆器、めのう細工など複数の技術を積み重ねていくと決めた。福井の伝統的工芸品の魅力を職人の立場から伝える唯一無二の存在となれば」とプランを描く。
グループは目下、国内有数のアイドルフェスである「東京アイドルフェスティバル(TIF)」出演を目標に県外での活動にも力を入れる。「目標を果たさないまま卒業することを非難されるのではないかと不安もあったが、背中を押してくれる反応が多く、ファンの人たちの温かさを感じた。グループからは離れるが、『TIF出演全力応援隊』としてメンバーの目標を後押ししたい」と彩葉さん。
12月29日に行う「彩葉わかな爆誕祭」と銘打ったイベントが、メンバーとしての最後の活動となる。「私にとってこの区切りは卒業でなく『進学』。さくらいとでの経験を基に、職人タレントとして活動していく姿をこれからも見守ってもらえれば」と呼びかける。